
noko
@nokonoko
2025年7月3日

寡黙なる巨人
多田富雄
読み終わった
借りてきた
現代は不安と不確実性に満ちた時代である。そらを乗り切り、変わらぬものにいたる指針は、どこに求めたらいいのだろうか。
真に変わらぬものの一つに「美」がある。でもこんな不確実な時代に、美とは何かという問いに、真正面から取り組む手がかりなどあるのだろうか。小林秀雄をいま読む意味は、真に変わらぬもの、常なるものを手元に取り戻すヒントが含まれているからである。
小林の芸術を見る態度はいつも変わらない。彼は、美しいものを観たり、聴いたり、読んだりする際には、まず謙虚に対象の中に入り込む努力をしなければならぬ、解釈とか意味とかは不要であることを強調した。当たり前のことに見えるが、それは難しいことだ。
『美を求める心』では、そのやり方を分かりやすく説いている。まず美しいという実体験を言葉に置き換えて解釈しようとする愚を否定し、知識や学問とは違って、正直な感受性を見失ってはならないと警告する。それは芸術だけでなはなく、ものの美しさ姿、人間の優しさ、美しい心を感じ取る人間性にも共通する態度である。
