やた
@Yatax
著者のインタビューなどを読んで、おそらく独特の文章なんだろうなと思っていたら予想以上だった。すごい勢いで駆け抜けていく言葉のスピードに必死で追いつこうとする忙しなさとわくわく感が、「煙か土か食い物」を読んだ時の感覚を思い出した。
どんなストーリーか、ざっくり言ってしまうとなんとなく家にも学校にも居場所のない主人公が、自分とは違うカテゴリーにいる人たちに巻き込まれてドラッグの売人になってしまう、という感じだけど、あらすじは物語の要じゃないし、その先に主人公がどうなってしまうのか、というストーリーではない。
色んな既成概念が取っ払われているなと思った。
学校にはあまり行きたくなくてバイトもクビになって、派手な後輩たちにビビっているけど、思ったことはバイトの店長にも同級生にもハッキリ言っちゃうしイヤなことを嫌々引き受けないし、母親との仲は悪くはないし感謝もしてるけどお互い好きにすればいいじゃんというドライな気持ちもあって、テンプレにはまらない人間の描き方が新鮮で良い。
読み進めても主人公がどんな人間なのかなかなかつかみどころがなくて、いやそもそも他人のことを理解したような気持ちになってるのって、自分の中にある色んなテンプレから近いものを選んではめて補完してるだけなんだろうなと感じた。
春、グミ氏、ラメち、ナルたちと芽生えた友情のような仲間意識のようなものも、同じようにテンプレにはまらない関係性なんだろうな。
この人が見ている世界をこの人の書く文章で、もっと色々知ってみたいなと思った。