読書猫 "初恋の悪魔 2" 2025年7月12日

読書猫
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@YYG_3
2025年7月12日
初恋の悪魔 2
(本文抜粋) “「口では諦めたとは言っていたが、一度好きになった人をひと月経たずに忘れられるはずがない」 「……参考までに聞く。一般的にどれくらいかかるものなんだ」 「長い場合は一生」 「……」 「短くて、半年は泣いて暮らす」 「……参考までに聞く。それを簡単に治す方法はないのか」 「ある。別の人を好きになることだ」 「別の人を好きになる。もしその人とも駄目だった場合はどうする」 「また別の人を好きになる」 「無間地獄じゃないか」“ ”「わたしは弁護士として、そして今小説家としても考えました。人なんて一度刺せば死に至ります。その上で人を十九回刺せる人間とはどんな人間なのか。どんな食べ物が好きなんでしょう。食べログの点数は気にするでしょうか。目玉焼きはソースでしょうか、醤油でしょうか。エコバックは持ち歩きますか。マンションの住人に挨拶はしますか。SNSに人の悪口は書きますか。どれほどの憎しみがあれば出来るんでしょう、どうですか、人を十九回刺せますか」“ ”「人生で一番素敵なことは、遠回りすることだよ。だからわたしたちは悲しくない。遠回りしてる今が一番素敵な時なんだよって」“ ”「お願いする前にお願いがあるんですけどって聞くのは、お願いの強要だよ。冗談だよ。何?」“ ”「面白くなんかありません。退屈な人間です。人を殺す人間の気持ちなんてこれっぽっちもわからない、ごくごく普通の当たり前の人間です」 「子供には未来がある。その未来を奪う権利は誰にもない。そんな当たり前なことを思う人間です。この人には大事な家族がいる、大事な友達がいる、だから命を奪ってはいけない。そんな当たり前な約束を守ってる人間です」 「だからと言ってね、犯罪者が特別な人間だと思ったら大間違いですよ。孤独だとか恵まれないだとか恨みだとか心の闇だとか、そんなものは誰だって持ってる。人を傷付けていい理由にはならない。殺していい理由にはならない。人殺しは特別な人間じゃない。かわいそうなのは自分だけだと思ってる愚か者だ。自分のことが大好きでしょうがない馬鹿者だ。人を傷付けたら駄目なんだよ、馬鹿者。人を殺したら駄目なんだよ、馬鹿者」“ ”「世界中、たくさんの暴力はあるし、悲しいことはあって、僕が生きてるうちにそれがなくなることはないかもなって思います」 「うん」 「でもね、人に出来ることって耳かき一杯ぐらいのことなのかもしれないけど……あ、すいませんこんな話」 「(首を振り)耳かき一杯」 「いつか、いつかね、暴力や悲しみが消えた時、そこにはね、僕の耳かき一杯も含まれてるんだと思うんです。今目にすることは出来なくても、大事なことは世の中はよくなってるって信じることだって」“
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