
巽
@Tatumi
2025年7月18日

崖にて
北山あさひ
いちめんのたんぽぽ畑に呆けていたい結婚を一人でしたい
八月十五日 お家三件分くらいの夕焼け雲 なんなんだ
たくさんの菊たくさんの無視いつも八月十五日がこわかった
家族というコントを終えてお母さん役お父さん役を終えたり
紫陽花のひとつひとつが夏の脳 考えて、答えを考えて
「北山さん医療資格ないんだ」と斜めに言われ「ねぇよ」と思う
服を着ても少し震えているチワワどこへ行くのだろう旧姓は
群青の胸を開いて空はあるかけがえないよさみしいことも
ともだちを旧姓で呼ぶともだちがちゃんと振り返る 蚊だよ
南洋の戦記の栞紐は青 生きているから嘔吐している
ロマンチック・ラブ・イデオロギー吹雪から猛吹雪になるところがきれい
年金がほしいよ鳩を追いかけて くっくく・くっく 地獄すれすれ
これからもずっと人間 さびしくて私は不死身の杉本が好き
北海道全域大停電であるほっかいどうらしくて泣いちゃうぞ
元気とはちがう力で生き延びる そうだね不死身の杉本佐一
三人は産めと言われて ふわふわのたまご蒸しパンこの中で暮らそ
くちづける猫のあたまの小ささよ悲しいことはヒトの領分
ほしひとつぶ口内炎のように燃ゆ〈生きづらさ〉などふつうのテーマ
蛾、それから角の潰れたボルヴィックたった一つの夜を飾りぬ
寝て起きて麦茶をのんでまた眠るがんばりたい人だけがんばって
好き
かっこいい
憧れる
歌集コーナーだけじゃなくて、プロレタリア文学、フェミニズム、反戦、地方問題、それぞれの棚に置いてほしい
