鳥澤光 "乙女の密告(新潮文庫)" 2025年7月19日

鳥澤光
鳥澤光
@hikari413
2025年7月19日
乙女の密告(新潮文庫)
デビュー作など3作を収めた『初子さん』(palmbooks)が素晴らしかったので、復刊されたこちらを読む。 アンネ・フランクはなにを求め、なにを奪われたのかを考えること。今日の世界の様相に直結する主題と賑やかな言葉と暗い空間とひんやりした光。 九段理江『School Girl』を評する機会があったときに、この作品を読めていた自分だったらよかったな。(本の仕事にかんする多くが、自分の無知と知識や努力の不足でまやけたものになってしまっている) 《七時五十八分の京都駅発、外大行きのバスは、アンゲリカ人形を思うバッハマン教授の気迫で、晴れた夏の日でも窓ガラスが白く曇っている。》P14 《京都の家の中は暗い。台所はさらに暗い。こんな冬の日はなおさらだ。外はまだかろうじて明るい。家の中の暗さに気づかない。何気なく開けた冷蔵庫の中が京都の家の中では一番明るいのだ。木目の黒くなった床の上を冷蔵庫の光が照らし出している。》P25 《「えー、信じられへんわー。不潔やわぁ」/これが乙女の決まり文句だった。乙女とは、信じられないと驚いて誰よりもそれを深く信じる生き物だ。この信心深さこそが乙女なのだ。》P30-31
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