
CandidE
@araxia
2025年7月16日

パルムの僧院 下
スタンダール
読み終わった
うーん、面白かった、っちゃ面白かったけれども、正直、ちょっと消化不良を起こした。
わからないけれども、おそらく原因は本筋とは少し違うところにあって、物語の背景として描かれる政争のコンテクストやイタリア・パルムの政治的状況、貴族たちの風習とパワーバランスの機微、さらにそれらを出版当時のフランスに重ね合わせたスタンダールの意図と当時の読者の反応、このあたりをきちんと把握できていなかったことが大きいように思う。すなわち小説を深く味わうための前提知識の不足ですかねー。故に私は、常にどこかツルツル滑り、脳内がボワボワするような読書になってしまったように感ず。
んで、なんかいろいろ説明不足だよなー、と思い少しく調べてみたところ、どうやらスタンダール自身が意図的に政争部分を雑に書いている節があって、検閲ヤバいから察してよねー、ということらしい。というか、作家本人が途中で政争を書くこと自体に飽きちゃって迷走した、ということもあったらしい。知らんけど。
超個人的には、『赤と黒』の熱量と勢いをそのままで、一気に『パルムの僧院』を読破するのは、ちょっと微妙で、おすすめはしがたい印象。芸風も若干だが、なによりも主人公の性質が決定的に違う。この超天然キャラを愛でることができるか、それが問題だ。一旦、バルザックあたりを経由するのがよいような気がする。
冒頭、訳もわからず主人公も読者もワーテルローに放り込まれる部分はめっちゃ面白い、が、イベント終了後のそこから先、物語に再びエンジンがかかってくるのは上巻の終盤から下巻にかけてのことで、で、その下巻は確かに面白いけれども、浅学な私には貴族たちの振る舞いや行動の細部がしっくりこないブカブカする進行、でも、本当はそのような政争だとか風習は本質ではなく、愛だよ、不条理だよ、めちゃくちゃだよ、ってな主人公を台風の目とした周囲の女性の情念の嵐と作家の迷走、その最中の舗装されていない泥道をぐちゃぐちゃ歩いている感じが、まあ、しんどい。でも面白いといえば面白い。強烈な勢いに煽られながら。そんな読書。
