
ユメ
@yumeticmode
2025年3月3日

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北村薫
読み終わった
感想
@ 自宅
再読。17歳の一ノ瀬真理子は雨の夕方に自宅でまどろみ、42歳の桜木真理子として目を覚ます。25年の歳月を飛び越え、夫と17歳の娘がいる高校教師となってしまった《わたし》は、容赦のない時の引き算に惑い、嘆き、憤り、孤独に苛まれる。なんと残酷な運命だろうか。それでも《わたし》は自尊心と責任感を胸に、桜木真理子としての今を生きてゆく。もしも私が同じ境遇に置かれたとして、彼女のように絶えず顔を上げて歩んではゆけまい。「わたしは、一ノ瀬真理子を愛しています。だって——そうでなかったら、可哀想でしょう」と口にして、それを理由に頑張れるのは、17歳としての若さゆえだけではない、彼女の資質だ。その強さとしなやかさに、久々に読み返した今回も深く胸を打たれた。不朽の名作。