すいちゆう "消滅世界" 2025年7月26日

消滅世界
消滅世界
村田沙耶香
恋愛 セックス 恋人 家族 性欲 自慰 人工授精 逆アダムとイヴの行き着く先は? 愛する人と結ばれて子供を産むという呪縛から解放された世界の先。呪縛は形を変えて相変わらず根を張っている。定義のつけられない混沌に確かなものを求めようとするけどかえってわからなくなってアイデンティも何もかも揺らいでしまう。読んでいて恋人との恋愛がわからなくなってきた。セックスが消えかけている世界で雨音が恋人とそれをする理由が、単に性欲であることを確かめるものであるならば、私は逆を求めてセックスをしているんだと思った。恋人じゃない人としてみた時に興醒めして、私はちゃんと恋愛できているのかもと安心した。それは根底的には同じで、何かを確かめるための手段としてのセックス。 数多くの選択肢が生まれた世界で、家族という選択を選び取る意義はなんですか。恋愛をする意義はなんですか。セックスをする意味はなんですか。と突きつけることは、私たちが普通に生活しているこの世界の、当たり前のように恋愛をしセックスをし家族を形成することの不気味さを鏡写しにしているよう。 「コンビニ人間」から読み始め、"家族"というものの歪さをつつき、それに嫌悪する主人公に惹かれ共感したが、"家族"を求めることが先だったんですね。そしてその姿が歪なのがやっぱり村田沙耶香さんで、あっという間に読み進めた。普通なはずなのに歪で、やっぱり家族は宗教だよね、友達との同棲する方が気楽じゃんね、ちょっとみんなこだわりすぎだよねって読みながら安心していくうちに、現実世界のまわりは普通に恋人と家族になりつつあって、私はまた取り残されていく。
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