
いずみがわ
@IzuMigawa_itsu
2025年7月27日

天山の巫女ソニン(2) 海の孔雀
菅野雪虫
読み終わった
「そうだ。富はときに、法や命令より簡単に人を動かす」p.211
交易、養殖、嗜好品の製造で財を成す海の国が舞台の第二作。富、欲、雇い雇われる関係が随所に出てくる。上手く作用すれば喜びを生み、逆に使い方を誤れば毒になる。そんなモチーフが散りばめられており、ぎっしり重いフルーツケーキを食べたような気持ちになる。
華やかな容姿と輝く才覚を持ち、国民から絶大な支持を集める第二王子クワン。しかし彼が本当に欲しいものは、絶対にお金では買えない。彼が今後あの国でどう生きるのか、またシリーズを追う楽しみができた。
王子に仕えたい自分の意志をはっきり意識したソニンと、彼女との契約が当たり前でないと痛感したイウォル。雇い雇われる関係にこうして気づきと反省と喜びがあるのは、幸せだ。
そして…
発展した経済、拡大した格差の頂点に立つ黒幕は「お金を払って依頼する、お金の分働く」という他者との契約すら結ばずに、無意識に、息をするように搾取を続ける。『新宿鮫』「無間人形」にこういうひといたなぁ。時代と場所を問わず、富が集まるところに生まれる可能性がある普遍的なモンスターだ。
