
しをに
@remnkkswn60306
2025年7月28日

文鳥・夢十夜・永日小品
夏目漱石
読み終わった
漱石の名だたる有名作をちゃんと読む前にここから入って良かったのか何なのかと思いつつ。以下、夢十夜以外のメモ。
「文鳥」
最後まで読んだ感想が「おい、こら」だったことをこの本の持ち主(借り物)に伝えたところ、大層面白がられたのでそれはそれで良かったです。その持ち主の感想は「文鳥の描写が可憐」で、落差がやばい。いや、文鳥の気配がそこにある空間の、かえって静かで時間がゆっくり流れていくような描写は美しかったと思う。その分余計に最後に、おいこらってなっただけで。
「京に着ける夕」
特に何かを意図した訳ではなかったけど、逆に読んで良かった。寒い今日の冬の風景に横切っていく喪失の隙間。「死んだものは笑いたくても、顫(ふる)えているものは笑われたくても、相談にはならん」さらっとこんな一文が横切っていく。
「車に寒く、湯に寒く、はては蒲団にまで寒かったのは心得ぬ。京都では袖のある夜着はつくらぬもののよしを主人から承って、京都はよくよく人を寒がらせる所だと思う」ここ好きだった。
「永日小品」
詰め合わせ。ところどころ、オチの付け方が現代的?というか、明確にオチをつけようとする文書が不思議だなと感想を述べたら、持ち主に「漱石の文章は根底に落語っぽさもある」と言われて、なんとなく言いたいことは分かる気がした。私は落語に詳しくないのでその辺りの印象はぼんやり。視点主人公はところどころで、そこはかとなく他者に対して無礼では、と思いながら読んでた。「行列」が好き。
「金」の「飯を食っていても、生活難がいっしょに胃の腑まで押し寄せてきそうでならない。腹が張れば、腹が切羽詰まって、いかにも苦しい」って、なんか物凄い文章だなと思った。
「倫敦消息」
好き勝手に喋っていてめちゃくちゃ面白かった。加筆修正前の方が断固として好き。「我輩も少々驚き入り申しておるところだが」を書き直したその心を聞いてみたい。異国の地にて、不自由な立場に晒され、そこに見えているものの歪さを思ったりした。
「自転車日記」
悪態の勢いがすごい!!!悲壮感もヤケクソぶりも、一から百まで大袈裟ですごい!!!最後にこんな文章が飛び出してくると思わなかった。バランスを崩して落車するまでの間によくここまでの物言いを詰め込めるものだなと思いながらずっと笑ってた。実情が笑い事だったのかは不明。