
えび
@robi_xiaoEB
2025年8月5日

新装版 海も暮れきる
吉村昭
読み終わった
「海も暮れきる」吉村昭 著
尾道へ向かうに海に関する本が欲しい!と買った一冊。
主人公である尾崎放哉は、金も仕事も人間関係も自分で爆破したあげく、「理想の死に場所を探す」とうそぶきながら旅先で平然と金を無心し、酒にのまれては暴言を吐く。ここまで荒っぽい生き方、さすがにわたしには無理だし「設定盛りすぎでは?」と疑ったけれど、実在した俳人・尾崎放哉の晩年を描いた話なんですって。
哀れに思って食べ物や生活用品を届けてくれる人に「量が少ない」と逆恨みしたり、とにかくずっと凄まじいクズっぷりが続く。でも、途中からは酒も飲めなくなって、死の恐怖、さびしさがものすごいクリアになる。そのタイミングでタイトルである
“障子あけて置く 海も暮れ切る”
という言葉が出てくる。
ただ、海といっしょに暮れていくだけ。何かを選ぶでも、拒むでもなくて、差し出された暮れにそのまま沈んでいくような一句。「暮れ切る」という言葉には、悲しみも痛みもなかった。ただ、時間が静かに終わっていく感じだけが、ぽつんと残っている。




