
いずみがわ
@IzuMigawa_itsu
2025年8月5日

天山の巫女ソニン(3) 朱烏の星
菅野雪虫
読み終わった
「彼らの語る歴史は、あくまで彼らから見た辺境の歴史にすぎません。正史というものは、民の父たる王の目で見た、この国の中心の歴史でなくてはなりません。偏った視点を入れるわけにはいかないのです」 p.204
舞台は工業、科学、文化を誇る北の大国・巨山。これまでで1番政治色が濃い、緊迫の3巻。
王権強化のために歴史を書き換え、科学のデータを改竄する。それを許す為政者は、対象が人間であっても同じだ。国の中央にいる声が大きい人々の支持を集めるために、周辺の小さな声しか持たない人々の住む場所を取り上げ、移住させ税を搾り飢えさせ、最後には報奨金で釣り上げて戦争の最前線に送る。
私たちが住む世界でも、今尚繰り返される支配の構造だ。ソニンたちはこの残酷なシステムを突き崩せるのだろうか。
欲だけあって思想がない空虚な内面、しかしそれを感じさせない輝くカリスマの鎧。巨山王のビジュアルは、私の中では松井優征先生作画になっている。シックスと尊氏なんだよな…
ラストのイェラ王女の回想にも震え上がったけれど、この本が2008年初版なことはそれ以上の鳥肌もの。タイムレスな名作に巡り会えたことが改めて嬉しい。
