
noko
@nokonoko
2025年8月8日

自分の人生に出会うために必要ないくつかのこと
若松英輔,
西淑
読み終わった
借りてきた
心に残る一節
苛烈なまでに感動しながらも岡本は、セザンヌやピカソを単純にほめたたえたりはしない。このとき出会ったのは優れた絵画ではなく、自分自身である。それが岡本の実感だった。ピカソに感動し、「自分自身の心がふき上った。ピカソをナマの眼で見て、ほんとにそれが自分じゃないかって感じがした」と述べている。
真の芸術は、人間の心をふるわせるだけではない。心の奥に眠っている魂を目覚めさせる。
西田のいう純粋経験とは、見える存在の奥に不可視な実在を感じることだといってもよい。むずかしいことではない。私たちは、ある素朴な行為のなかにその人の情愛や憐憫を感じることがある。そうしたとき、私たちの内心をうずまく何ものかを漱石は「詩」と呼ぶのである。
器用に立ち回ることのできない自分は、眼前のことを愚直にやるほかない、真にそう思えたとき、「運」の道を歩いている
会話で吉本さんが一度ならず口にし、そしてそれゆえに深く印象に残ったのが「力量」という言葉である。…親鸞にふれたときだったと思うが、「あの人のようにすごい力量があればら」と語ることもあった。
…力量と彼がいうときの「力」は、語学力、語彙力、理解力、表現力などとはまったく違う。むしろ「ちから」とひらがなで表記し、特定の方向への囚われなき働きであると表現したくなるものだった。
吉本さんは批評家、思想家として紹介されることが多いが、独創的な詩人でもあった。『詩とはなにか』と題する本で、詩を書く営みをめぐってこう書き記している。
詩とはなにか。それは、現実の社会で口に出せば全世界を凍らせるかもしれないほんとのことを、かくという行為で口に出すことである。

