
あむ
@Petrichor
2025年8月9日

再読中
学生の頃から何年もずっとお気に入りの本です。
読書を始めたい人に「何がおすすめ?」と聞かれたら必ずこれを薦めるようにしています。
以下ネタバレ含みます
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「光の箱」を学生のときぶりに読み返していて、当時の私はハッピーエンドに満足のため息を漏らしていたなと思い出す。
あれから色んな経験をして、色んな不条理を知ってしまった私は思う、track2までが現実で、bonustrackからは、理想の世界なのだろう、と。
人生とは大抵そういうものだ。
伝えたいことは伝えそびれてしまうものだし、
誤解は解けないものだし、
一番好きな人とは結ばれないことが多くて、
大切なことにはいつだって後から気づいて、
それは手遅れであることがほとんどだ。
この時私は思った。
一番好きな本を読み返すという行為は、とても尊い。
であると同時に、残酷なものであるのだと。
知ってしまうのだ。知らされてしまうのだ。
自分が変わってしまったこと、無垢に結末を受け入れられなくなっていること。
大好きだった結末に、疑問を抱くようになっていること。
作者がどんな意図でbonustrackを綴ったのかはわからない。
ただ重要なことは、たった数ページのbonustrackひとつで、完結していた物語をそこにいたるまでの伏線に変えた作者の手腕のすごさたるや、である。
だからきっとこの物語は、bonustrackを含めても、含めなくても、私のように理想と現実とで分けて考えても、よいのだと思う。
また、何年後かに読み返そう。
その時の自分がこの結末をどう捉えるか、楽しみである。
