
ユメ
@yumeticmode
2025年6月23日

それでも世界は回っている 3
吉田篤弘
読み終わった
心に残る一節
感想
吉田篤弘さんの作品で大切に描かれているテーマのひとつとして、「継承」が挙げられると思う。いなくなってしまったひとの意志を引き継ぎ、後世に伝えてゆく。それはとても人間らしい営みだと私は感じる。〈インク三部作〉、とりわけこの第三作ではそのテーマがひときわ色濃く感じられた。回り続ける世界は、止まることのない時の流れは、私たちから大切な存在を奪い去ってゆくけれど、私たちは大切な存在の記憶をこの世に留め、生かし続けることができる。そうした役割を担うことができるのも、きっと人間ならではだ。
また、時の流れはただ残酷なだけでなく、私たちから悲しみを連れ去るものとしても描かれていることに優しさを感じた。「たとえ、今日が悲しい日であったとしても、否応なしに今日は終わって明日になる。明日はもう今日じゃない。明日はもう悲しい日じゃないってことだ」という台詞に、温かな気持ちになる。シリーズ三作を通して、「それでも世界は回っている」ということを噛みしめる読書となり、今の自分にとってとても意味のある時間となった。


