ユメ "アンの娘リラ" 2025年6月24日

ユメ
ユメ
@yumeticmode
2025年6月24日
アンの娘リラ
アンの娘リラ
モンゴメリ,
村岡花子
感想を書くのがとても難しい巻。第一次世界大戦が炉辺荘にも影を落とし、あれほど朗らかだった家庭内の会話が戦況一色に塗り替えられてしまったことがやるせない。炉辺荘や牧師館の男の子たちがひとり、またひとりと出征してゆくくだりは辛くて思わず涙が溢れる。 今とは時代が違うとはいえ、愛国心ゆえに出征することを正義と賛美して描いたこの物語の空気には賛成できない(もっとも、続く『アンの想い出の日々』では、モンゴメリは二度目の大戦に対してまた異なる見方をしていたように記憶しているが)。善良な若者たちを戦場に送り、家庭に残される女たちにも多大な犠牲を強いた戦争を二度と繰り返してはならないと強く思わされる。どんなときも前向きな人生哲学を貫いてきたあのアンが心労で寝込むところなんて、見たくはなかった。 上記を前提としたうえで、幼かったアンの末娘リラがひとりの女性として立派に成長してゆく物語として、本書には胸を打たれる。戦争がなければ彼女はもっと無邪気なままでいられたと思うとやはり複雑ではあるが、アンやスーザンを支え、よりよい自分であろうとするリラの姿には何度も感銘を受けた。 そして、ジェムと犬のマンデイのあいだに結ばれた深い絆の顚末には、読み返すたび何度でも心を揺さぶられるのだった。
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