
CandidE
@araxia
2025年8月8日

読み終わった
バルザックやスタンダールと比べ、ここまで時代が下るといよいよ小説は現代的。モーパッサンは、街角のスナップショットといった感じ。その編集感が量産型現代短編小説の雛型。
表題作、『脂肪の塊』『ロンドリ姉妹』も良かったが、個人的には、『散歩』が救いがなくよかった。が、ある種、若い作家が描く老人の絶望の型としてはありがちなのかも知れない。
ーーーー
「世の中には、悪い星のもとに生まれた人間がいるものだ。そう考えると、にわかに目のまえの厚いヴェールがとり払われたかのように、自身のかぎりなく惨めな生活が、単調で悲惨な生活がまざまざと目に浮かんだ。過去も、現在も、そして未来も惨めな暮らしがつづくのだ。最近の暮らしは過去の暮らしとなんら変わるところはない。自分のまえには何もないし、うしろにもない。自分の周囲にも、心のなかにも、そしてどこにも、何ひとつとしてないのだ。」ー『散歩』より引用