CandidE "オルラ/オリーヴ園~モーパッ..." 2025年8月10日

CandidE
CandidE
@araxia
2025年8月10日
オルラ/オリーヴ園~モーパッサン傑作選~ (光文社古典新訳文庫)
今回読んだ、光文社古典新訳文庫の3つのモーパッサン短編集の中で、相対的に個人的に最も面白いセレクションであった。主に後期の作品。 ーーーーーー  「ぼくが神をどう思っているかわかるかい。人間には窺い知ることのできない、奇怪な造物機関だ。一匹の魚が海中にいくつもの卵を産みつけるように、神は無数の世界を虚空に撒きちらす。神は創造する。それが神の職務であるからだ。ところが、神は自分のつくり出すものについてはなにも知らない。愚かしいまでに多産ではあるが、みずからが撒きちらした種子によって生みだされた物の、あらゆる種類の組み合わせについては自覚していない。人間の思考は、神の生殖行為からたまたま生まれた、幸運な小事件だ。局地的で、つかのまの、予期しなかった偶発事なんだ。地球とともに消えてなくなる運命にあるが、あらたな組み合わせが永遠に反復されることによって、ここか、あるいはべつの場所で、なんらかの形で復活するかもしれない。われわれは、知性というこのちょっとした偶発事のおかげで、われわれのためにつくられてはいないこの世界で、とても不自由な思いをしている。この世界は、思考する生き物をうけいれ、住まわせ、やしない、満足させるようにはつくられていなかったからだ。われわれが真の洗練された文明人であるとすれば、いわゆる神のおぼしめしというやつとたえず戦わねばならないのも、まさにその知性のせいなのさ」ー『あだ花』より引用
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved