
碧の書架
@Vimy
2025年8月14日

戦場の人事係
七尾和晃
読み終わった
図書館の特集棚で見かけて借りました。沖縄本島南部戦で、人事記録を持ち帰った石井耕一さんのお話です。戦史に詳しい方ならおそらくこの一文で、それがどんなに過酷な事か分かるのでしょう。私は本書を読んで初めて知りました。
ノンフィクションは文字量が多く時間がかかる本が多いように思いますが、この本は文字が大きく行間が広く、物理的に読みやすいです。内容は、不必要に感情を煽るような書き方は避けていると感じます。しかしそれでも、実際に起こった事が酷い出来事であった為に、さらっと数行しかない戦死時の様子に悲しく辛い気持ちになります。
石井さんが遺族と話す時には、感傷的にならず戦死時の様子を伝える事が務めだと考え涙を堪える時もあれば、生存の可能性に縋りたい遺族の気持ちを否定せずに伝えようと微笑む事もある。悩んで当たり前、対応が変わって当たり前と感じました。実に人間らしいと思います。長い時間をかけて遺族に伝え続けた真摯なお姿がそこにあります。
読み終えて、終わったーという感じはしない本です。分からない事は分からないまま、過去から現在まで続いている一部分を見た、という感じ。
記録が残っていない方は、分からないままでいいのかな。知りたいと思う人がいなくなったら、それで終わりなのかな。
私は知りたいと思ったし、戦跡や遺骨はこのままでいいのかな、戦争を忘れるのは平和だから、では済まされないのではないかな…と考えさせられました。






