Nowaki
@nowaki
2025年8月17日

侍女の物語
マーガレット・アトウッド
読み終わった
政治的熱狂や強い指導者が出てこないのに侍女制度が定着するのが早すぎる、国内極貧ぽいのに侍女にその布量の服をなぜ準備できる?子ども産ませたいのになぜタイミング法のみ?しかも、その回数じゃそもそも妊娠できんだろ…とか、その儀式のやり方だと男性側もやりたくないだろうし、できなくなって絶対続かないって…など、構造的なリアリティがなさすぎて、感情がついていかなかった。ので前半は完全に斜め読み。(2195年に1980年代のカセットテープがそのまま聴けるの?発掘ならカビてて聞けないのでは?とか、たった100年前のものを「発掘」とは?発見ではなく?とか、感染症や環境汚染の記述も私には合わなくて、最後はほとんど読み飛ばし)
でも、一方で、「妊娠中で働けない」「社会から落ちたらもう戻れない」という自分の状況と、侍女のポジションは重なるところが多くて、読後はぞっとした。私がこの社会で本当の意味で自由になるには、年収200万のシングルマザーになるくらいしか選択肢がない。それって、自由を追求すると、「殺される」恐怖に重なる。
オブフレッドの語りは、最初から信頼できない。良い人そうなので信頼した上で読み進めないといけない雰囲気は感じるんだけど、どうも気持ちわるい。レビューで絶賛されてる理由が全くわからない…ゥゥゥと読み進めていくと、中盤あたりで、オブフレッド自身、いわゆる「信用できない語り手」として設計されていることにようやく気がつく。そして、その語りの不確かさ自体が、この社会がいかに語る自由・考える自由を奪っているかを示しているように見える…のだが、それでも好きにはなれない。
彼女は、自分の過去や現在を言葉にしようとしてるけれど、それが全く整理されてないというか、意図的に読み手・聞き手を混乱させようとして、あえてそう語ってる。隠してることも多そう。モイラへの態度とか、普通に考えて、おかしい。
客観的には、その混乱や飛躍は、体制によって思考や記憶の回路ごと壊された人間の姿に見えるというのかもしれないが、私には、これが彼女自身の欺瞞に感じられて気持ち悪い。
この気持ち悪さが何を意味してるのかは、私はまだ理解できてない。自分の性的欲求とか愛の希求とか、女性は言葉にしにくいから云々いうんだろうけど、ほんとにそれだけか?と。なにか誤魔化したいことがあるんだろうと思うが、オブフレッドの自己批判や罪の意識がほとんど語られず、ようわからん。
ネトフリで見た「またの名をグレイス」と似てるなと思ったら同じ作者だった。となると、設定の詰めの甘さは意図的なんだろうけど、個人的好みとしては、もっと背筋が凍るような、もっとガチガチのやつ読みたい。
結末は違うけど、コンビニ人間と似てるなとも思う。
2025/08/18追記 そう言えば、最近日本でも新しい政党が躍進してて、それは極めてギレアデなのを思い出した。


