
comi_inu
@pandarabun
2025年3月7日

硝子戸の中
夏目漱石
かつて読んだ
オールタイムベスト
先生は自分を面白くも賢くもない人間だと思ってるし、硝子戸の中から世間を覗くくらいで丁度いいと考えてるのに、どいつもこいつも遠慮なく家にきて人生相談してくるからおもしろいな。しかも家に来るやつが大概なんだかヘン。いや、ヘンだから家まで来るのか。いやいや先生も先生だ。素気無いように見えてなんだか甘い。ヘンなやつでも放っておくことができないタチなのだろう。結局よく知らんヘンなやつの人生までウンウン悩んで、ただでさえ身体悪いのにしっかり気まで病んだりする。
「私は悪い人を信じたくない。それからまた善い人を少しでも傷つけたくない。そうして私の前に現われて来る人は、ことごとく悪人でもなければ、またみんな善人とも思えない」
確かに出てくるひとみんな善い人であるんだけど、どこかちょっとずつ悪人ではある。まあこの世の人間誰しもちょっとずつ悪人だと思うが、漱石は特別悪人への感度が高い。それと同時に悪の塩梅がひとの可笑しみ、可愛げにも通じてることも深く知り抜いている。
「不快の上にまたがって、一般の人類をひろく見渡しながら微笑している」
こんな一文が結びの章にありますがこんなにも難しいひと、嫌いになれないよ…!
わたしのおすすめは、熱出した次の日あたり、大事を取って休養します〜〜と報告したあとのお昼頃、布団の中でゴロゴロしながら読むことです。明るい日が射し、世界が働いていることを感じながら読むのがいちばんハマるのでやってみてください。