
comi_inu
@pandarabun
2025年3月7日

革命前夜
須賀しのぶ
かつて読んだ
ベルリンの壁の崩壊前夜を描いた時代小説であり、登場人物全員容疑者に見えるミステリ的要素もあり、かつ才能と才能が衝突しあう青春小説でもあり……小説を読む面白さが詰まっている作品だと思った。
もし映像化したら、シュウジの父親の遺産である協奏曲が聴いてみたい。東ドイツの寒々しい風景にバッハのゴルドベルグなんかが流れるシーンが見てみたい。濡れた石畳の道や戦災から放置されたままの瓦礫、革命に寄せる若者たちの瞳や蝋燭の火を見てみたい。
才能と自信に溢れた男ラカトシュ・ヴェンツェルは大変魅力的だ。奔放で意地悪で相手の心を折ることを屁とも思わない。そんな男が終盤かなりショッキングな展開を迎えるわけだが、ラカトシュの振る舞いは実に悪魔的だった。「赦し」をもって相手を永遠に罰するあの所業。個人的にはたまらないものがあった。
ラカトシュに対して登場人物の誰もが「やられた!」「ふざけんな!」と思っている。ラストには読者も登場人物らと同じ一員となってしまうようなオチがある。
(ぜんぶ掻っ攫っていきやがった、あの野郎!)
そう思いながらも、わたしたちは項を閉じるしかない。
これはオタクの予想だが、映像化したらラカトシュは覇権をとる男になる。どこかの配給会社の目に止まってくれないかなあ。