CandidE "地下室の手記" 2025年8月22日

CandidE
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@araxia
2025年8月22日
地下室の手記
地下室の手記
フョードル・ミハイロヴィチ・ドストエフス,
安岡治子
読書計画ではもう少し先の予定だったが、レーモントフ『現代の英雄』を読んだ勢いで、余計者の系譜として読みたくなった。相変わらずめっちゃ面白い。 当訳は、これまで読んだ中で最も、冒頭の主人公が理知的で自意識にも制御が効いているように感じた。これはこれでインテリという背景に整合しており、好印象だった。全体に分かりやすく、すっきりとしてとても読みやすい。文章のドライブ感も、人間としてイってしまった感じも、十分に味わえる。素晴らしい。 ただその分、他訳に比べてねっとりした低域は控えめで、自意識の諸刃の食い込みや神経症的な濁り、あの全てがガンギマったどうしようもない切迫感はやや希薄。良くも悪くも、一生後を引く猛毒は和らいでいるように思われた。読後感は一長一短。二、二が四。
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