まいまい "ひと" 2025年8月24日

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小野寺史宜
p.30 それでも母は笑っていただろう。僕を東京に送り出したときもそうだった。来てくれた鳥取駅でも笑っていた。そういうところできちんと笑える人なのだ。泣いたのは、父が亡くなったときだけ。あのときにもう一生分泣いたと、自身、あとで言っていた。 僕がキャンパスのベンチで泣いてたのは、およそ二十分。どうにか落ちついたところで顔を上げ、スマホで鳥取大学前駅の時刻表を検索した。 ほろほろ泣いた直後に検索。冷たいな、と思った。でもそんなものだ。ドラマのようにはいかない。どんな場面にも、そのあとがある。
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