
ものひろい のぶちゃん
@nob_monohiroi
2025年3月6日

陽だまりの彼女
越谷オサム
読み終わった
感想
紹介
読書日記
「陽だまりの彼女」を読了した。
「陽だまりの彼女」というフレーズに、私はおおらかで優しく、落ち着いた大人な雰囲気がある女性を想起した。ところが、読了後はどうだろう。ヒロインはその限りではなくーー落ち着きなんてかけらもなく、おおらかではあるが自分勝手、優しくはあるがきまぐれな、しかしまさしく「陽だまりの彼女」がそこにいたのだ。
主人公・浩介は広告代理店の、ヒロイン・真緒は下着ブランドの会社員として、10年越しの再会をくすぐったがるところから始まる。中学生の頃、二人はクラスから浮いた存在同士で輪を作り、かけがえのない青春を送った。それから訪れた10年の空白を埋めるように、二人の距離は急速に縮まり、あれよあれよと結婚しーー別離した。
この小説に触れて、私は貪るように読んだ。純真な二人の愛情、素敵な登場人物たち、そして隠し味のようなミステリー要素。ハマらないわけがない。
特に胸が熱くなったのは、ヒロイン・真緒が……ああ、何を書いてもネタバレになってしまう! 真緒が感謝や好意をストレートに伝える描写である。
「愛してます」「お父さんとお母さんの子でよかった」「大好きだからね」
「プランターに隠すなんてありきたり〜」と嬉しそうににやついているところなんて、私はその光景を見たのかと思うくらい鮮明に思い描ける。
彼女のような真っ直ぐな感情表現は、現代日本を生きる若者に足りないものなのかもしれない。一日、一日を、大切に噛み締めることを、平和すぎる怠惰に慣れてしまった私たちは忘れてしまいがちである。
大切なものをいくら「大切にしていた」と言ったところで、それが過去形な時点で、もう二度と感謝を伝えることも愛情もそそぐこともできない。宝物でもしまいこんでいては、抽斗の中でホコリをかぶってしまうのだ。
真緒の真っ直ぐなきまぐれが、そう教えてくれた。
最後に、この本をおすすめしてくれた夫へ。
あなたがこの本を好きな理由を考えながら読むのは、とても楽しい時間でした。
楽しい時間をありがとう。
そして、これからも楽しい時間をーーできるだけ長く、一緒にすごしてくれるとうれしいです。
ところで、皆さん。猫は、お好きですか?
