
amy
@note_1581
2025年8月31日

読み終わった
感想
ジェンダー
男性学
弱者男性
毎日暑い。日傘やハンディファンで暑さをしのぐ人が多いなか、シャツにスラックス、革靴姿の男性たちを見かける。半袖ならまだしも、長袖シャツやジャケットを着ている人すらいる。まるで「暑さなど感じるな」と強いられているかのようで、どこか滑稽で哀れにも映る。
杉田俊介『男が男を解放するために 非モテの品格・大幅増補改訂版』では、男性は差別されてはいないが「抑圧されている」と指摘されている。たしかにその通りだと思う。近所の小学校では、女の子たちがカラフルなランドセルを背負う一方で、男の子は今でも黒・紺・青ばかり。そうした光景からも、この社会にいまだ「男性はかくあるべし」という要請が強く残っていることがわかる。
本書で印象的だったのは、旧来の価値観から“降りられる”こと自体をマウントの材料にしてしまう男性がいる一方で、降りられずに揺らぎ、苦しむ男性たちに徹底して寄り添っている点だ。揺らいでいい、苦しんでいてもいい。スマートに価値観を移行できなくても、自分や他者に加害しなければそれで十分だし、むしろ誇りに思おう――そう投げかけている。
さらに本書では、社会構造が自然にミソジニー的な価値観を内面化させるだけでなく、同時に「ミサンドリー(男性嫌悪)」も存在することが指摘される。男性自身が自分の身体や性的欲望を嫌悪し、「子どもを持つなら女の子のほうがいい」と思うのも珍しくない。その自己嫌悪が自家中毒のように働いている、という分析には驚きつつも強く納得させられた。
男性、特に弱者男性の苦しみに真正面から向き合った一冊。もっと広く読まれてほしいし、この本に描かれる男性像をも包摂できる社会であってほしいと思う。





