CandidE "人生の短さについて 他2篇 ..." 2025年8月30日

CandidE
CandidE
@araxia
2025年8月30日
人生の短さについて 他2篇 (光文社古典新訳文庫)
「記憶を呼び起こしてください。あなたがしっかりした計画を立てたことが、いつありましたか。あなたの決めた通りに事が進んだ日は、どれほどわずかでしたか。自分を自由に使えたことが、いつありましたか。あなたの普段どおりの顔つきでいられたことが、いつありましたか。あなたの心がおびえずにいたことが、いつありましたか。これほど長い生涯をかけて、あなたがなしとげた仕事は何ですか。どれほどたくさんの人たちが、あなたの人生を略奪していったことでしょう。しかもそのとき、あなたは、自分が何を失っているかに気づいていなかったのです。いわれのない悲しみや、愚にもつかない喜びや、飽くことのない欲望や、甘い社交の誘惑が、どれだけの時間を奪っていったでしょうか。あなたに残された時間は、どれほどわずかでしょうか。――もうおわかりでしょう。あなたは、人生を十分に生きることなく、死んでいくのです」 ーー『人生の短さについて』より ーーー ロシュフコーの「反セネカ」に関連して通読する。本書は解説の量が豊富で、特に「セネカとストア派の哲学の章」が、わかりやすかった。また、言うまでもなく、セネカのストイックで高次元な思索は、多くの示唆に富んでいる。ぜひ感化されて、より善く生きよう! さて、正直、直近ロシュフコー→セネカと幸福論めいた啓発アフォリズムの雨あられを浴びて、理解の帯域不全を起こし、倦怠が差す。要は、同じ問いが何度も回って差分が見えにくくなる。すなわち諸問題はぜんぶ一緒、人はいつでも愚かで不幸で死におびえていて、人生に答えを求めている。で、その答えは遥か昔にパターン化され、以降すべては角度と表現を差し替えただけ。と、そんな具合に飽いてしまった。これは哲学書の読みすぎあるある、である。 まあそれでも『心の安定について』の終盤あたりから、少しく興味が戻る。「人間の欠点や不幸を嘆いて、人間嫌いに陥るな」の章にて、 ーーー 「だからこそ、われわれは、ものの見方を変えなければならない。人々が持つ欠点すべてを、忌まわしいものと思わずに、笑うべきものと思うようにするのだ(中略)われわれは、なにごとも軽く見るようにし、心を楽にして、ものごとに耐えるべきなのである。人生を嘆き悲しむより、笑い飛ばしたほうが、人間的なのだ(中略)だが、笑うよりも、いっそう好ましい方法がある。それは、社会的な風習や人々の欠点を静かに受け入れ、笑いにも涙にも、とらわれないようにすることだ」 ーー『心の安定について』より ーーー とあって、これは個人的に最近、現実でも読書でも何度も直面しているテーマである。そう、まずは状況を笑えればいいよね。そして己の執着も自在に調整できればなおいいよね。ついでにレバーは栄養価が高くてとてもいいよね。と、まあそんな感じで全体的には雑な読書、雑な感想になってしまった。ストイックからは程遠い。セネカは精神のハイスペックを要求するからね。すみま千円。亀は万年。 さて、ストア派はマルクス=アウレーリウス、セネカと来たので、少し間を置いてエピクテトス『人生談義』へ行ってみようぞと思ふ。人生哲学の理解がアイドル状態に復帰したのなら。
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