
kei
@k3245
2025年9月1日

帝国ホテル建築物語
植松三十里
読み終わった
植松三十里著「帝国ホテル建築物語」読了。
2025/9 1冊目
◎サマリ
・フランク・ロイド・ライトに魅了された男たち
・ライト館という巨人の存在
・つながれるバトン
◎書評
国内資本のホテルの中でも帝国ホテルは特別だ。
圧倒的な荘厳さと日本の象徴としての誇りを持つホテル。
中でも2代目、帝国ホテル(ライト館)は帝国ホテルの優美さを象徴するような建築だ。
そのライト館に関わる人々の苦悩を描き切ったこの作品は日本人として読んでおくべき素晴らしい作品だった。
①フランク・ロイド・ライトに魅了された男たち
この物語は帝国ホテル支配人の林愛作とライトの右腕となってライト館建築に関わる遠藤新を中心に進む。
ライトは施主の嫁を略奪したり、気の狂った弟子がライトの作業場を放火したりと事件が続いたことで、世間からは冷飯を食わされていた。
しかし、ライトの日本文化へのリスペクトの心や圧倒的な芸術センスに愛作も新も魅了されていく。
どんな難題でもライトのためであれば骨を折り、ライト館の竣工に向けて邁進する姿から彼らの圧倒的な情熱を感じずにはいられない。
愛作に至っては、ライトが求めるレンガを作るため、愛知県の常滑まで何度も出向き気難しい職人と対話を重ねる。
支配人という立場でこのような動き方を続けていた愛作のライト、そして帝国ホテルライト館に対する思いは並々ならぬものがあったのだと感じる。
②ライト館という巨人の存在
美しさに魅せられた男たちがライト感という名の呪われた巨人に呑まれていく姿を映し出したのもこの作品のすごいところだと思う。
愛作、新、そしてライトに至るまでライト館に関わったが故に犠牲するものがあまりにも多すぎた。
最後はどうにか竣工するのだが、開業日に関東大震災が襲ってくる。
ライト館という恐ろしくも美しい巨人に寄り添わなければこんなことにはならなかったかもしれないということが立て続けに起こる。
美しさと恐ろしさは表裏一体であると改めて感じさせられる。
③つながれるバトン
現在、ライト館の玄関部分は愛知県の明治村に保存されている。
恐ろしくも美しすぎるライト館はまだ生きているのだ。
これも時の総理、佐藤栄作がバトンを受け継ぎ、最後は明治村に移築するに至った。
佐藤は政治的配慮のもと保存を指示したわけだが、それでもライト館に魅了された人々が裏で手を引いていたからこそ時の総理が動くまでとなる。
フランク・ロイド・ライトという建築家のすごさと帝国ホテルに込められた男たちの熱い想いを感じられる素晴らしい一冊だった。
近々明治村にも足を運んでみたい。