こた "人質の法廷" 2025年9月7日

人質の法廷
刑事弁護士が経験する怒りや絶望感、虚しさ、緊張感、そしてやりがいが余すことなく詰まった小説だった。 被疑者・被告人である増山淳彦に嫌疑がかけられた2つの女子中学生殺人事件を基軸として物語は進む。 刑事手続に馴染みのない読者のためか、説明的な台詞が多いのが少しノイズに感じられたけれど、全体としてのテンポは良く、のめり込むように読めた。 主人公の川村志鶴が正当防衛無罪を主張した事件での和解的解決や、中心となる殺人事件で必ずしも真犯人に辿り着けない展開(とはいえ、そこは物語のおもしろさを意識してか、読者には真犯人が明かされる)はリアル。 法学を勉強し始めた学生や法科大学院生、修習生、新人弁護士にも読んでもらいたい。 起訴前・起訴後を通した弁護の入門書にもなり得るクオリティだと思う(作者の里見蘭さんが目を通した参考文献の質と量とがこの本の品質を下支えしてる)。 ただし、須崎由里さんの監修が入っているとはいえ、細かな部分に不正確な表現が残っているのは要注意かも。 刑事弁護がんばろうと思えたな。
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