
漆野凪
@urushinonagi
2025年9月9日

レシピの役には立ちません
阿川佐和子
読み終わった
料理に関するエッセイ集。どのエッセイも、テンポがよく読みやすい。
作中の、「胃袋は、まもなく投入される食べ物のかたちになって待機しているに違いないのだ。」という文章がとても好きだ。〇〇の口、たとえばお寿司の口などの表現はよく使われるけれど、胃袋がそのかたちになって待機しているとは考えたことがなかった。考えたことはなかったけど、とてもしっくりきた。何か食べ物を望むときに、臓器がそのかたちをしているなら仕方ないよね、という気持ちにもなる。
サンドイッチのパンの耳に対して「暴力的」と表現しているのも好きだ。繊細な歯触りのサンドイッチたちに突如混ざる、硬くて噛み切りにくいパンの耳。別にパンの耳のことは嫌いではないけれど、サンドイッチという食べ物においてはノイズになる部分があると思う、と深く納得した。「暴力的」という強いことばを、作中ではやわらかく使っているところも作者のすてきなところだろう。
この本を読んでいる最中、猛烈にお腹が空いてなんちゃって鹹豆漿を作った。満たされる感覚があった。
