
youxi
@youxi
2025年9月10日

生きて行く私 (角川文庫)
宇野千代
読み終わった
1897年生まれの85歳の著者が、その波瀾万丈に生きた人生を振り返る本。
4度の結婚と離婚をし、10軒以上の家を建て、日本各地に住み、小説を書き上げ、自らファッション雑誌を創刊して事業を立ち上げと、好奇心の赴くままに行動していく著者の人生には圧倒される。
地獄を見たであろう体験も、興奮に目を輝かせたであろう瞬間も淡々と振り返る。悪いことはすぐに忘れると性格だと書いているが、何かをしたいという意欲を実現するためには、過去を振り返る余裕などなかったというのが真かもしれない。
しばしば著者を突き動かすのは、彼女独自の審美眼に留まった美しいもので、それが人生の軸になっているには素敵だなと思った。
タイトル通り、85歳になっても現在進行形で著者の人生は進んでいて、「死ぬ気がしない」と言えるような健康的な体質も、その軽やかさの背景にあったのではと想像してしまった。
期待以上に惹き込まれる、面白い本でした。
