DN/HP "海辺(かいへん)の光景" 2025年9月10日

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2025年9月10日
海辺(かいへん)の光景
同じ作家の「戦後文学放浪記」で言及されていた表題作を読んだ。くらった。わかる、とも思った。 母の、そして死の側で思索と記憶を漂い過ごす9日間。死を前にして訪れる感覚。不安や強いられる気がしてしまうセンチメンタルなもの、所在なさや端的な面倒臭さ、故に感じる不謹慎さと自省。悲しみの前に訪れる戸惑い。それらには覚えがあった。完全に分かる、と思ってしまった。 ラストシーン、母親の亡くなった日、作家自身の忘れられない海辺の光景。文章にすると幻想的で少しロマンティックで美し過ぎるのかもしれないけれど、それが必要なのだということも、分かる。作家にも小説にもわたしにも。作中の作家を思わせるキャラクタが「一つの“死”が自分の手の中に捉えられるのをみた。」のを読んだとき、過去にあったそんな瞬間(わたしの場合は父の死だ)のことを思い出した。青空とタバコの煙。 「頭に浮かんだ言葉は、それを文字に書き写して、もう一度自分で確認して初めて本当の言葉になる」これは新書の方からの引用だけれど、それも改めて納得出来た気がした。そんな風にあの瞬間のことは書いておきたい気もした。
海辺(かいへん)の光景
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