なかむら "第4次現代歴史学の成果と課題..." 2025年9月11日

なかむら
なかむら
@duxuni
2025年9月11日
第4次現代歴史学の成果と課題(第1巻)
栗田禎子さんの「帝国主義と戦争」の論考だけ読んだ。近年の日本の研究を中心にまとめていて、より長いスパンでの研究史については別稿(『歴史学が挑んだ課題』)があるらしく、そちらも読まなければならない。 木畑洋一さんの『二〇世紀の歴史』で「帝国主義」という言葉を現代にあてはめることへの疑義が書かれていたのは私も印象に残っていたけど、栗田さんはそれに反論して、むしろそうした議論が「帝国」に焦点をあてた帝国主義研究の帰結なのではないかと書いている。「帝国」研究はある種その存在を正当化してしまう危険があり、たとえばそこで重要なものとされている「国際公共財」という概念は、近年の日米の軍事的一体化を根拠づけるうえで重要な役割を果たしてきたと言う。そこから進んで、「支配される側」の視点を欠いた「帝国」研究や「グローバル・ヒストリー」を批判した箇所が読み応えがあった。 栗田さんは他の論文でも反植民地闘争の国際的な相互影響について書いてらっしゃるけれど、ここでも帝国主義に対抗する反戦運動の流れについてこのように書いている。「その際同時に注意を払いたいのは、こうした運動は決して先進諸国内部で抽象的理想論にもとづいて自然発生的に生まれたわけではなく、その背後には帝国主義支配のもとで侵略・植民地化された諸地域の民衆のたたかいがあったということである。一八八〇年代にウィリアム・モリスらによってスーダン戦争反対の運動が展開された背後には、それに先立ってイギリスによる占領や軍事介入に抵抗するエジプトやスーダンの民衆の動きがヨーロッパに伝えられていたという事実がある。第一次大戦直前のイギリスにおける反戦運動や「秘密外交」反対運動(バートランド・ラッセルも参加)が、イラン立憲革命への英露の干渉に抗議し、イラン民衆との連帯をめざす動きとも連動していたことが示唆するように、欧米における平和運動はじつはあくまで侵略・植民地化される側の諸地域の民衆の運動に規定されるかたちで展開されてきたといえるのである。」(107-108頁)
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