
kei
@k3245
2025年9月13日

怒り 上下巻セット
吉田修一
読み終わった
吉田修一著「怒り 上下巻」読了。
2025/9 8冊目,9冊目
◎書評
大ヒット中の映画「国宝」の作者、吉田修一の小説。
総論的として、とても面白かった。
最後の風呂敷の閉じ方もうますぎる。
吉田修一の小説はやはり濃厚。
八王子での殺人事件をベースに、千葉の房総半島に住む親子、東京に住む30代のゲイ、沖縄に住む夜逃げを何度も繰り返す親子の物語が順に描かれる。
八王子での殺人事件の犯人、山神は逃亡しておりどこかに潜伏している。
それを警察が追っていく中でいくつかの犯人の特徴を得る。
犯人の特徴は房総半島に住む親子の元に現れた青年、ゲイの家に転がり込んだ男、沖縄の無人島で偶然出会った男と一致する。
果たして誰が犯人なのか…最後までハラハラする展開だった。
そして、八王子の事件現場に残された「怒」の血文字。
犯人は何に怒っていたのだろうか。
個人的には、自分が生きていることへの「怒り」のように感じた。
【ここからネタバレあり】
犯人の気に入った人間の懐に入っていくことが得意という特性、死にたくはないけど死んでもいいという考え方。
相手と仲良くなってもどこか空虚感を感じてしまう自分に対する「怒り」。
その怒りを思わず相手にぶつけてしまうことの「怒り」へと通じていたのではないかと思う。
しかし、この小説で怒っていたのは犯人だけではない。
多くの登場人物が様々な事象に「怒り」を感じていた。
これらの「怒り」とどう向き合っていくか。それが試される世の中であることを吉田修一は示したかったようにも感じた。

