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@11lotuslotus11
2025年9月13日

体温と雨: 木下こう歌集
木下こう
かつて読んだ
私家版のほうを持ってる。
春泥をあなたが踏むとあなたから遠くの水があふれだします
誰かいま白い手紙を裂いてゐる 夜のカップのみづ揺れだして
タブレットひとつぶ飲みしほそやかな葡萄の蔓のごとき頭痛
かんたんな気持ちで見知らぬ町に行き樹下をすぎゆくバスに乗りたし
月光は踏むとしづかな音をたてひかりはじめるふしぎなひかり
てのひらに掬へば零れゆくばかり水もま水のやうなる日々も
森の木と森のてまへに並ぶ木はすこし思考がことなるやうだ
目眩には前兆ありてわたくしは鬱蒼とした森かもしれぬ
まづ水を飲むところからはじめるの 樹のやうにまつすぐに飲みたい
わたくしであることの疲労 コンビニに入るとき赤い傘をたたみぬ
