Motiyama
@10010KY
2025年9月18日

読み終わった
以前ある作家が紹介した記事を読み、何気なく借りたのだが…
今、読むべき本だった。
新しい文化、権力と宗教に心酔して従う人達と、古い因習と精霊を狂信して排他的に生きる人達が両者共、滑稽に描かれている。
信じるものの中身が変わっただけでやってる事は同じじゃないか、とウンザリする主人公は「蛇の言葉」を操るヒーロー…でもなく、善き日々や仲間も徐々に失われ孤独を深めていく。
エストニアの社会を寓話的に皮肉を込めて描いた小説、という触れ込みだったが。分断が叫ばれて、各地で戦争が起こり、AIという従来の生活常識を変える仕組みが急速に広まりつつある今の世の中、に奇妙に付合していると感じた。
この小説に出てくるどのキャラクターの立場を取るのか、を考える事で、これからの自分の生き方に示唆を得られるように思う。
そしてどの立場を選んだとしても、絶対的な正解などないのだ、という現実にも気付かされる。全ての立場に光もあれば闇もある。
ある人にとっての「光」は他者から見たら惨めな錯覚、かもしれない。しかしどの光を浴びてどんな闇を引き受ける(又は目を背ける)のかを選ぶのは自分…だとも言い切れないな、というところまで考えさせられる。
自分にはどうする事もできない大きな潮流に飲み込まれており、それに気づいていないだけではないか。
しかし気づいていたとして、流れに身を任せられないのは相当に生きづらいだろう。
気づいていて、考えてもいるが、何もしない、というのも滑稽で哀れだ。
「蛇の意見では、誰もが、滑稽に生きる権利も、思いつきに任せる権利もあるのだ」
蛇の立場が一番しっくりくるなあ、と感じた一文。
その蛇たちの行く末はどうなるのか…は小説を読んでみてくださいませ。