
読書日和
@miou-books
2025年9月23日

9つの人生 現代インドの聖なるものを求めて
ウィリアム・ダルリンプル,
パロミタ友美
読み終わった
現代インドに生きる9人の人々の物語。
尼僧の話、カンヌールの踊り手(祭りの間だけ、最下層の人間が神になる憑依芸能)、エッランマの娘(売春で生計を立てている)、修行僧、吟遊詩人、踊り子、寺院の守り手ーー。
一人ひとりの声を通して、インドという国の多様な宗教と文化が立ち上がってきます。
まるで小説のようなお話なのに、全部ノンフィクションというところがまた、インドの奥深さ。。
この本で特に心に残ったのは、叙事詩の話。
かっては馬の美しさを詠えば皆が共感し、四夜も五夜も、人々は物語に耳を傾けて過ごした。
けれど今は家畜を飼う人も少なく、共感は得られず、夜通し聞く余裕のある人もいない。
便利になった時代に、同時に失われていった豊かさを思わされました。
もうひとつ印象深かったのは、かってチベットに暮らしていた僧が語った夏のカム地方のダクパ、その谷の美しさ。
知らない土地だし、もう見る事はできないだろうけど、そして彼も故郷に帰れないからグッとくる。
バウル行者という存在も初めて知りました。
いろいろなご縁があって、訳者の方がこの本を訳して、今自分の手元に来たんだという、そんなご縁を思いを馳せています。




