
成功者の味方は怠慢な他人
@No_Read_No_Life
2025年9月22日

15歳のテロリスト
松村涼哉
読み終わった
少年犯罪によって大切な人を失った記者と15歳の少年の2人の視点から描かれる物語。
登場人物それぞれの事情に共感させられ全員の事情を把握したとしても正しい答えにはたどり着かない。利己的さゆえに犯してしまった行為と他人の実情を知って初めて生まれる後悔。世界の無常さを描いている。
2019年に発表された今作は同じ年にヒットしたドラマ『3年A組』と重なるメッセージを持っている気がした。自らの事情から利己的な行動をとる人々。インターネット上で自分で考える事をせず、受け取った情報をまんまと受け入れ容易に信じ手のひらを返すそんな主体性のない愚かさをもった人々。彼らが持つ暴力性を描いた今作や『3年A組』が発表された2019年はバイトテロが大きく取り沙汰された年だった。脚本の時期などを考えるとそれが影響された可能性は低いが、インターネット上の悪人がテレビ、マスコミにも大きく取り上げられ始め、集中砲火の火力も格段に増していったこの時期。この2つの作品は一見悪人の視点を描いているが、本当に悪人と考えて良いのかを読者に考えさせる。そして何よりのメッセージが情報を鵜呑みにして過剰に騒ぎ立てるネット上の人々の愚かさだ。2025年現在もこのようなメッセージを持った作品は多く存在しているが、このムーブメントに終わりが来る日が訪れるのか考えさせられた。
680円


