ハンク "新版 家族喰い 尼崎連続変死..." 2025年9月24日

ハンク
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@lardenkaizer
2025年9月24日
新版 家族喰い 尼崎連続変死事件の真相
尼崎事件に関する綿密な取材内容を記した本書は、家族という概念を根本的に考え直すきっかけを与えてくれる。悪意をもった他人が入り込むことで、いとも容易く崩壊し、互いを傷つけ合う。事件が明るみになったあとの傷を負った親子のやりとりは胸に迫るものがあった。 被害者のことを考えれば、主犯の角田美代子はもちろん、暴力や虐待に加わった人間を擁護することはできない。しかし親子関係に不和がなかったなら、こんな悲劇は起こらなかったのではないかと思う。その点では、主犯の生い立ちにも感情移入してしまうことがしばしばあった。 人間は誰しも心に闇を抱えている。誰しもが家族という一番身近な相手に不満を持ち、小さく傷つけ合っている。そんな心の隙間につけこんだ手口は残虐といわざるをえない。だが、この手の事件は加害者の残虐性のみに議論を終始させるべきではない。民事不介入を理由に捜査を怠った警察。違反に気づきながらも、声をあげることができなかった人々。そうした構造的な問題を孕んでいるよう思う。 「母という呪縛、娘という牢獄」の読了後にも感じたが、すべてを家族という単位で完結させるには無理がある。他人の過度な干渉は肯定しないが、本当に困ったときに、手を差し伸べる人がいてくれる地域社会であってほしいと思う。
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