
ハム
@unia
2025年9月24日

月魄の楽響 -Fêtes galantes-: ヴェルレーヌ詩集
ポール・ヴェルレーヌ,
祇遠偲世
読み終わった
ヴェルレーヌの詩を初めて読んだ。
まず翻訳をした方の技量がすごい。
あとがきにも書かれていたように、全体を崩すことなく一語を崩すことができないのが詩であって、まさに翻訳をする過程で再創造を成し遂げている。
原著はどう表現されているのか気になるほどの描写と表現に呑み込まれた。
美しい旋律のクラシックを聴いているかのように、幻想的な世界に浸れる芸術的な詩だった。
叙情性、神秘性、厳かさ、美しさが調和していて、「初恋」が特に印象的だった。
高き底靴(ヒール)に裳裾(もすも)をたなびかせ
坂なす路欄をめぐりて歩く影ひとつ
時に涼風葉を揺らし
木漏れる光と梳けこむ 白き脚
-誰もが享受する憧憬(せかい)に心は奪われる
時として木陰のベンチと腰掛けて
植梢を眺める瞳の美しさ
嫉妬の矢となり飛び交う あげは蝶
ブラウスの襟をほどいてはららぐ その瞬間
純白の胸売にて眠る在りし日の
記憶よ明滅 (いかずち)よみがえる
砂金ときらめく暮秋のかえで
落ち葉なす時間にふたり寄りそうて
夢は泡影 夜月と浮んで腕をとり
-いとも恥ずかし気に-
互いの名前を奏でてささやいた
幸悦たる言葉に満ちた
思い出よ





