
トム
@yukiyuki7
2025年2月14日

トラペジウム
高山一実
読み終わった
【あらすじ】
主人公・東ゆうがアイドルになるために、東西南北の美少女たちを集め、4人組のグループを作るという計画を進める物語だ。
ゆうは、これまで数々のオーディションに落ちてきた過去を持ち、それでも夢を諦めず、緻密な戦略を立てて動いていく。
しかし、彼女は「アイドルになりたい!」という自分の夢をメンバーには一切話さず、「ただのボランティア」と偽り、3人を自分の計画に巻き込んでいく。**
例えば、南の華鳥蘭子とはテニス対決をきっかけに友達になり、西の大河くるみとはロボット技術大会を通じて関係を築く。そして、北の美嘉は整形によって美しくなった少女で、外見を強みに加わる。しかし、3人は「アイドルになる」ために集められたことを知らず、ゆうの一方的な計画に振り回されることになる。
さらに、ゆうは「アイドルになるために過去をクリーンにしておく」という考えのもと、ボランティア活動などを積極的に行い、世間に好印象を与える準備を進める。彼女の先見性や行動力は確かにすごい。しかし、その過程で3人の意見を一切聞かず、「みんなも同じようにアイドルになりたい」と勝手に決めつけていた。
結果的に、テレビ番組のボランティアコーナーに出演し、ディレクターのコネで事務所入りを果たす。しかし、くるみは人の注目を浴びることが苦手で、自暴自棄になってしまう。 他の2人も、ゆうの独断的なやり方に戸惑い、最終的に3人は事務所を解雇されてしまう。それでも、4人の友情は続き、ゆう自身はアイドルになることに成功し、物語はハッピーエンドを迎える。
【読んで感じたこと】
物語としては、ゆうの行動力や計画性は目を見張るものがある。 夢を叶えるためにここまで周到に準備し、着実にステップを踏んでいく姿勢はすごい。
だがしかし、ひつまぶし。
その一方で、「なぜそれをするのか?」という説明をせずにメンバーを巻き込むのは、読んでいて気持ちのいいものではなかった。
特に、「みんなもアイドルになりたいはず!」と自分の価値観を押し付け、他の3人の気持ちを一切考えなかった点には賛同できない。結果的にアイドルになれたからよかったものの、もし途中で計画が崩れていたら、3人の人生を大きく狂わせていたかもしれない。
『トラペジウム』は、夢を叶えるための「戦略」と、それによって生じる「人とのすれ違い」が交錯する物語だった。自分の夢を叶えることと、他人の意思を尊重することのバランスの大切さを考えさせられる作品だったと思う。