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2025年9月27日

ある犬の飼い主の一日
サンダー・コラールト,
長山さき
かつて読んだ
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新潮クレスト・ブックス
ある男の一日。夏の土曜日。犬の病気、彼をきっかけに出会う女性との恋。姪と弟、元上司や隣人との邂逅。移動中に眺めるオランダの街。四度の目覚め。一日のなかでもたくさんの出来事をフィジカルに経験するけれど、そのどれからも何かを思い出し、そこから思索や後悔、希望も湧き上がり、感情が揺れる。「何を見ても何かを思い出す」というのは、この前の滝口さんのエッセイで知ったヘミングウェイの短編だけれど、本当にそういうこと。そして、思い出したならそこから思索がはじまる。側からみたら“なにも起こらない”とみえるような一日でも、本当に様々なことが思い出され、考えられ、起こっている。一日には過去は勿論、未来も含まれる。たくさんの可能性と不可能性。普段は見ることの出来ないそれらを読んだり話たり出来るようにするのも小説なんだと、このところ考えていたりする。犬がかわいい。
電車でこの本の最後の数ページを読んでいたときを思い出していたのは、とても昔に一緒に暮らしていた犬のこと。ダックスフンドのアルフレッド。彼の最後の日の記憶は未だにとても鮮明で少し動揺した。それは同じ車両に乗っていた人たちには見えないし伝わらないことだけれど、電車で本を読んでいたことも、そのときもう一度感じていた、あの悲しさと不信感に、これからまた犬と暮らすことがあると良いなと、名前を考えはじめてしまう未来も全部その一日の出来事。そんなことも考えて「ため息とともに本を閉じ」た。




