欠片 "さようなら、私[新装版]" 2025年9月27日

欠片
欠片
@kakera_0404
2025年9月27日
さようなら、私[新装版]
大好きな小川糸さんのこちらの作品も読了しました! 「過去の苦しみや辛さを乗り越えて、新しい自分に出会う」というようなものがテーマとしてあるのではないかと思わされる作品が3作収められた文庫本でした。全体を通じて、生と死、愛、食など、小川糸さんの全作品に共通するようなテーマ性はやはりふんだんに含まれているように感じました。モンゴルやカナダなど、海外の描写が多く、他の作品とはまた違った「実際の土地の広さ」や「世界の大きさ」といった壮大さを感じたので、それは本書ならではなのではないかと思います。海外などにたくさん行かれる方は、きっと私よりもずっとずっと広い世界を知っているのだろうなと感じさせられる作品でした。3作の中では、カナダでヒッピーのような暮らしをしていた母とその娘の間で生まれてしまった確執について描いた「サークル・オブ・ライフ」が一番好きだったように感じます。ですが、娘の境遇があまりにも辛すぎるので、愛だけで本当に母を許すことができるものなのか?といった点は少々疑問に感じました…。娘の認識の中での再出発、過去にけりをつけるための考え方としては、綺麗に描かれているように思います。また、息子を亡くした女性が、おっぱいパブで人々と交流し、自分の生を取り戻していく「おっぱいの森」も好きでした!こちらの方も大変苦しい描写がありますが、それ以上に女性たちのおっぱいが象徴する、母性や、赤子を育てるという「生」のあり方がものすごく印象的に描かれているように思います。 一作目の「恐竜の足跡を追いかけて」の、男2女1の三角関係的な恋愛要素を含む友人関係、自死などの構図は、夏目漱石の「こころ」を思い出します。主人公が女性であるという点など、細かな違いはありますが、「こころ」的な関係の中で起こる葛藤を新解釈して、新たなハッピーエンドに結び付けて行った作品のようにも感じました。 全作品を通じて、小川糸さんらしさが強く現れた作品だと感じました!
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved