
saeko
@saekyh
2025年9月27日
Face with Tears of Joy
Keith Houston
絵文字の歴史!仕事でも私生活でも毎日使う身近な存在でありながら、想いを馳せてもみなかった。
文字の中に絵を交えるという表現は、実は古代から存在していた。それが絵文字として急速に発展するのは、GUIが発明され、パソコンや携帯電話などのデバイスが人々に普及する1980年代以降。
当初は若者の使用を促進するためのちょっとした表現であったものの、みるみるうちにさまざまな国の人々に広がった絵文字は、人種やジェンダーの多様性に対応することを要請され、ユーザのアイデンティティを表現するものとしての意味合いを帯びていく。
性的コンテンツや薬物などの違法なやりとりの伏字として使われたり、大企業やセレブリティから商業的に利用されたり、さまざまな文脈に拡大して使われるようになり、時に物議を醸し、議論の元になってきた絵文字。実はUnicode Committeeによって厳格に管理されている。委員会に承認されないと利用可能にならないことや、マイノリティや政治的問題への対応の遅さが指摘されはするものの、かわいらしいデコレーションという範疇を遥かに超え、全世界の人々が自分の意見、思想、価値観を表現するうえでの不可欠な要素となった絵文字の管理と存続について、不断の努力を続けている存在なのだ。
絵文字を頻繁に使いはするものの、その多様化にあまり関心を持っていなかった(なんとなく増えたな〜くらいにしか思っていなかった)ので、その背景やそれを取り巻く議論を知ることができて面白かった。国の政治状況によって、国民に使われる絵文字に偏りがあるらしく、絵文字は世相すら反映するメディアになっていて、自分が想像していたよりも人々のコミュニケーションにおいて大きな意味を持つ存在になっているということを知った。
著者が絵文字の誕生と発展の歴史について網羅的に、時に批判的に振り返りながらも、最後は“the world of text is far richer for having emoji in it.”と前向きに締めくくっているのがよかった。巻末に歴史のまとめや出典も丁寧に記されていて、とても読み応えのある本だった。全編にわたって絵文字がたくさん&オールカラーで読みやすいのもポイント高いです!
