
saeko
@saekyh
2025.07以降に読んだものと思ったことの記録
- 2026年8月21日
世界ひと皿紀行 料理が映す24の物語岡根谷実里いろいろな国に行って、現地のおいしそうなものを食べて、いいなあ。と思うけど、モンゴルの遊牧民と生活を共にしたり、トンガの家庭で捌かれた野生の豚を食べたりする勇気があるかというとなんともいえないので、やはり岡根谷さんの熱意と行動力はすごい。 世界各地の家庭料理が紹介されていてどれも目新しく面白いのだけど、自分としては特にフィンランドの料理がどれも美味しそうだなぁと思った。森で摘んできたブルーベリーでパイを作り、初夏の風に吹かれながら食べるなんてまるで絵本のよう。トナカイの心臓のクリームパスタに味変でベリージャムを入れるというのも、いったいどんな味がするのか気になる。 巻末に日本でも手に入る食材でレシピが載っていて、興味を持ったひと皿を家でも再現できるのがうれしい。 - 2026年8月15日
新版 思考の整理学外山滋比古たしかに、大学生のときに読みたかったなあと思う内容。 学んだことを丁寧に記録して、振り返ってアウトプットして、いらなくなったものは捨てる…というシンプルなアイデアなのだけど、これを愚直に続けられる人が研究者として身を成せるのだな、というのはすごく納得感がある。 社会人になって、あらゆるタスクに追われて疲弊していると、こういうインプットをひとつひとつ丁寧にやる体力が湧いてこない。だから、純粋に学問に向き合っていられた学生の頃に読んで、活用したかったなあ、と思う。 - 2026年8月10日
- 2026年8月7日
楽園夕木春央普段ならフィクションの作品は文庫化まで待つけど、夕木春央さんの新作となれば読まざるをえなかった! やはりと言うべきか、前作を上回るほどの衝撃はなかったけれど…結末をふまえて最初から読み直したくなってしまう、噛めば噛むほど味の出る感じは変わらない。 三部作として綺麗な結末をみたなぁという印象。 - 2026年8月6日
絶望しかけた女子のための世界史ティチュー・ルコック,鳥取絹子世界史というタイトルは偽りありで、実質的にはフランス史。 女性が子どもを産むことができるという身体的な性質から、いかに男性の所有物化され、権利を奪われてきたか、という読んでいて辛くなるような歴史が綴られている。 たしかに世界史の授業で出てくる登場人物って男性ばかりだ。女性が能力があることを認めると不都合であること、実際に活躍が妨げられていたこと、そしてあらゆる差別と偏見からなかったことにされてきたんだな…。 そしてどれだけ批判され、虐げられても、平等を勝ち取るために戦ってくれた先人たちのおかげで今の社会があるのだ、と改めて思う。もちろんまだ完璧ではないけれど、この本にある中世や近代の扱いに比べたらましだ…。 ただやはり、男性と女性を敵対構造にするような主張は受け入れられづらさがあり、過激なフェミニズムは敵視されやすい状況が根強く存在すると思う。女性はもちろんだけど、男性も、その性別であることで他者や社会から押し付けられている固定観念から解放されて、公平な機会が保証されるような、そんな理想を目指したい。 - 2026年7月29日
マスメディアとは何か稲増一憲テレビ・ラジオ・新聞といったジャーナリズムに関連するメディアの話ではあるのだが、それを超えて、いかに情報が広がるのか、どのようにして人が得た情報から意見を形成するのか、についてあらゆる研究結果が網羅されていて面白かった。 人の意見は環境によって決定されていて、人は自分の考えを正当化したいという生存戦略からくるバイアスを持っているし、SNSのパーソナライゼーションから生まれるフィルターバブルが、いかに偏った考えを助長するかも改めて気づかさせられた。 中立的であることは難しいけれど、自分自身が偏っていることに自覚的でなければいけない。 とりあえずTwitterを消した。 - 2026年7月19日
たぶん、ターニングポイント弘中綾香弘中アナの出産育児エッセイ。妊娠発覚から仕事中のつわりを経て出産へ、そして育児と仕事の両立など、母としての旅路をつまびらかに綴ってくれていてとても参考になる。 女性として生きていることで、理不尽に感じることって本当にいっぱいある。そして現代は、育児の辛さやしんどさがフォーカスされがちなきらいもあり、働きながら母になるという選択肢を手放しで喜べるような時代ではないと思う。よくも悪くも諦めなければいけないことがたくさんあり、それが苦しみにも救いにもどちらにもなるのだろう。それが自分のためだけでなく、共に生きる他者を迎え入れる人生の妙なのかもしれないと思った。 - 2026年7月18日
人新世の「黙示録」斎藤幸平戦後に生まれた我々が当然のように受け入れている「資本主義こそ究極的な経済体制である」という固定観念を喝破し、その飽くなき成長によってもたらされた経済格差と環境破壊を批判する。 そしてハイエクが提唱した市場経済=民主主義vs計画経済=全体主義の二項対立を脱構築しながら、世界情勢の悪化に歯止めをかけるための手段として「緑の戦時経済」や「エコロジー独裁」というラディカルな手段を提唱する。 戦争の記憶からタブー視されてきた数々の概念を現在において活用可能なものとする理論は面白いし、自分も競争による格差ではなく分配による公平を追求しなければ社会に蔓延る不幸は緩和できないのではと思うので論旨には概ね同意した。 一方で、このようなエコロジー独裁を果たしてどのように実現していくのか?19世紀のパリ・コミューンや、戦前の赤のウィーン、近年では社会主義者のマムダニ氏のNY市長当選など、歴史的な事例を引用してはいるが、それはあくまで事実であって再現可能な方法論ではないような気がする。 少なくとも今のアメリカや日本政府が経済成長よりも環境問題を重要視して左派路線に転換することは現実的でない以上、厳しい戦いだろうし、理想論的だと捉えられても仕方がない部分もあるが、しかし実践の途を探さないことには人類の未来はないという、齋藤氏からの警鐘なのだろう。 - 2026年7月4日
資本主義リアリズム 増補版セバスチャン・ブロイ,マーク・フィッシャー,河南瑠莉マーク・フィッシャーが資本主義社会に対して感じていた手詰まり感がひしひしと伝わってきて、これでは生きていることも苦しくなるよな、と思った。 後期資本主義がもたらしたポスト・フォーディズムの現代において、人々は精神のバランスを崩しているけれども、それが個人の責任に帰されていることに対する問題提起に、自分も息苦しくなるような思いがした。 - 2026年7月1日
- 2026年6月28日
仕事のストレスで疲弊して、その状態を麻痺させるために空き時間はスマホでSNSを無限スクロールしてしまう私には刺さるところが多すぎて苦しくなった。 『暇と退屈の倫理学』をより親しみやすく、現代に寄せて書き直したものともいえる。 ポストフォーディズムの時代、ひとつの専門性を磨けばいいのではなく不確実な状況下で常に成長を求められ、その不安からくる精神の不調が社会ではなく個人の責任として帰せられてしまう時代、人々は自己啓発によってハイテンションに振る舞うか、断片的な娯楽による刺激で感覚を麻痺させようとするかで乗り切ろうとしていると指摘する。 その手段の最たるものであるスマホとSNSは、完全に断つことは現実的ではない一方で、インスタントな情報の供給によってわかりやすいもの・承認欲求が満たされるものばかりを選択させられてしまいがちだ。 この時代を乗り切るための自助努力として、筆者はスマホとの接続を切り、孤独になるための趣味を持つことを奨励する。 やはり「令和人文主義」の代表格だけあり、社会ではなく個人が変わることを薦めるのだなと少しがっかりする気持ちと、でも社会をすぐに変えられないとした場合に個人としてどう過ごすべきかという視点も大事だよなという葛藤した読後感になったが、非常に示唆的な内容だった。 - 2026年6月21日
- 2026年6月16日
宗教のアメリカ藤本龍児合理主義や科学至上主義が正義とされてきた現代において、非合理的なもの、魔術的なものが求められるようになった社会的背景を探る-という話かと思いきや、アメリカの建国から現代に至るまで、カトリックやプロテスタントがどのような変遷を辿ってきたか、それがいかに現代に影響を与えているかという歴史寄りの話だった。 アメリカ研究において宗教が見過ごされてきたが本来は不可分なものである、という主張からはじまるのだが、アメリカといえば日曜にミサに行くイメージがあるし、何かにつけてGodという言葉が出てくるし、キリスト教が根付いている印象だったから、そこまで意外性もなかった… - 2026年6月15日
資本主義と、生きていく。品川皓亮生産性向上、KPI達成、非連続的成長、会社で言われすぎてげんなりする言葉の数々。そんなにスピードアップして、コスト削減でいろいろなものを切り捨てて、新しい商品をたくさん出して行った先に、なにがあるの?答えは、何もないのだった。なぜなら、資本主義社会では成長し続けることこそが目的であり、競争に負けないためにさらに早く・安くつくり、高く売ることを目指し続けなければいけないからだ。 事業会社で働いているととみに実感する、数字に追われたり成長を強いられたりすることのしんどさを、歴史的経緯を丁寧に紐といて解説してくれる良書。いまある仕組みもある価値観において良しとされているもので絶対的正義ではないし、つらいのは個人ではなく構造のせいだと考えられるようになれば、その打開策も見つけやすくなるかもしれない。 良くも悪くも本書の着地点はマイルドで、「資本主義と共生するためのほどよい距離感を身につけよう」というもの。個人における実践という限りでは現実的だとは思うものの、なんとなくの消化不良感も残る。じゃあどうやって?の論が少ないことが気になるのと、あとは社会において経済成長を目指し続けることで生まれている歪みは放置してもいいの?という疑問が残る。まあこれは本書の射程圏外ということなのだろう。脱成長コミュニズムもそれはそれでラディカルすぎて実現可能性低いしな… - 2026年6月8日
リチャード・ローティの『偶然性、アイロニー、連帯』は、書名はよく聞くが手に取るハードルがなかなかに高い学術書なので、やさしく解説してくれる本があってありがたいと思った。 人類普遍の必然的な本質などは存在せず、あらゆる人間も社会も偶然性の産物であると捉える。共同体において「正しさ」や「常識」とされているものを疑うアイロニーを持つ。そして残虐さを回避するために、感情をもって紐帯をむすぶ。これが異なる人間が異なるままにともに生きていく方法だという。 ともすれば陳腐に聞こえなくもない。とはいえ「人類普遍の真理の追求」という哲学の至上命題を否定し、言語哲学の立場から「ことばづかい」と社会におけるコミュニティ形成の関係性について説いたのは画期的だったのかもしれない。 伊藤計劃の『虐殺器官』で登場する虐殺文法が実際に研究され、発見されていたというのが面白かった。 - 2026年6月5日
四方対象グレアム・ハーマン,山下智弘,岡嶋隆佑,石井雅巳,鈴木優花難しすぎた! でもフッサールやハイデガーという知の巨人たちを批判的に継承して乗り越えようとするスタンスがめちゃくちゃかっこいいと思った。 もっとちゃんと理解して、デザイン方法論に活かしたい。 - 2026年5月16日
民主主義の非西洋起源について(1011)デヴィッド・グレーバー,片岡大右民主主義が「西洋」で生まれて世界に広がっていったという傲慢さを痛烈に批判し、そもそも民主主義と国家は両立しえないと常識を根本から引っくり返す。逆張り精神がすごい! - 2026年5月12日
東京でお酒を飲むならば甲斐みのり写真がきれいで文章がかろやかで、読んでいて心地いい。酒飲み文化への憧憬と敬意を感じる。 甲斐さんのお父さんとの思い出のエピソードが、楽しそうでありながらすこし切ない気持ちになる。わたしもお父さんと飲み歩きしたいなあ、と思う。 「浅草へ行こうか。浅草はお父さんの生まれた街」 - 2026年5月10日
生成AI時代の言語論大澤真幸読み応えがあった。筆者の大澤先生はAIに批判的なスタンスで、AIが行っている情報処理は人間の知能とは異なること、一方で我々がAIに主体的に隷属することで人間本来のクリエイティビティを手放し、かつ大規模言語モデルを所有するテック大企業が提供するデジタルな荘園の農奴となることで、世界の封建主義化が進み、経済格差の拡大が深刻化することに警鐘を鳴らす。 私も基本的には同様のスタンスではあるのだが、主張を正とするためのややバイアスがかかった情報を選択的に記載しているような感じも否めないので、それは少し意識しながら読むのがよさそう(そういう意味ではAI賛成派の松尾先生との対談を載せている点でバランスが取れていると言えるかも)。 AI活用がさかんに叫ばれる現代だけど、わたしはそこに喜びや価値はあまり感じていなくて、「新しい技術を使いこなさないと置いていかれる」という焦燥感にドライブされているのが気持ち悪いなあとずっと思っているので、わたしも基本的には批判的な立場。 この本の中で主張されている、AIにより自分の思考を言語化させることで、中動態の思考(自分で書いてみることで、自分ってこういうことを感じていたんだ、考えていたんだということに気づく)が奪われるという意見にはなるほどと思わさせられた。 前半の対談と後半の論文パートで主義主張が重なっている部分が大いにあるので、個人的には論文→インタビューの順番で読んだほうがすっと入ってきやすいかもと思った。 - 2026年5月7日
動きすぎてはいけない千葉雅也がんばって読み切ったけど、難しかった! ただこれまで読んだ千葉先生の本たちが、この本に書かれていることから派生して書かれているんだろうな〜と思った。 基本的に全然よくわからなかったけど、ところどころ印象に残る文章があった。 「世界はデフォルトで狂っていて、多少まともになるときがあるにすぎない」という一文は、なるほどなと思うと同時に、哲学者ってロックだなあと思った。 世の中をわかりたいという欲求から、情報を一般化したり、ツリー構造で整理したり、何事にも過剰に意味を求めようとする社会において、物事はリゾーム的に無秩序に広がって繋がったり切れたりして存在しているという考え方のほうが正しいんじゃないかなあって思うなどした。
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