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saeko
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@saekyh
2025.07以降に読んだものと思ったことの記録
  • 2026年1月2日
    斜め論
    斜め論
    統合失調症の発症と治癒における病理学的モデルが主題になっているが、この理論は精神病以外の一般的なテーマにもあてはめられるように感じた。 世界に向き合い、了解しようとする態度として、目標を達成しようと上を目指したり、真相を掘り下げて理解しようとする「垂直性」が支配的だが、類似性のある他者と境遇を分かち合う「水平性」の重要性と、どちらかに偏ることなく水平性を前提として垂直性を弱毒化して取り入れる手法を提案する(=斜め横断性)。 またそれだけでなく、垂直性/水平性に対置される「死ぬための思想」と「生き延びるための思想」も印象的だった。なにか一つの決定的な出来事を重要視するのではなく、その先も続いていくものに目を向けることの大切さが、自分の今後の人生の意思決定においてじわじわと沁みてくるのではないかと思った。
  • 2025年12月23日
    静かな働き方
    静かな働き方
    労働に生活を侵食されることに警鐘を鳴らす本はいろいろあるけれど、この本では事例紹介だけではなく、労働がやりがいや自己実現と繋げて語られるようになった歴史的背景に言及している点がおもしろかった。 古代ギリシアから労働は避けるべきものとされていたが、贖宥状の販売に反対したプロテスタントが労働を尊ぶ文化を生み出し、それが利益を生み出すことを正とする資本主義の理念と合致した。現代になると、経済成長によってCEOの収益は何倍にもなったが、社員には充分に還元されず、金銭のかわりにやりがいやモチベーションを対価とするようになっていく…というのが記憶にある大掴みな話。 やはり本を読んでいるといいのは、いままで自分が所与のものと思っていたことが、その時代の思想を反映して生まれたもので、絶対的なものではないということに気づけることだ。内面化していた価値観を相対的に捉えることができるようになる。 この本では、ワークライフバランスをとるうえでの特効薬を提示してくれるわけではない。 ただ、やりたいことを仕事にすることや、仕事で自己実現をすることが唯一の正解ではない、と説いたうえで、自分にとっての成功とはなにか、社会の期待に応えるのではなく自分自身で決めることが大切だと教えてくれる。 どんなに搾取的な競争社会を憂えたところで、いますぐにその構造が変わるわけではない。それをふまえたうえで、ある程度は適合しつつも、自分の人生を手放さないようにせよ、という極めて現実的なアドバイスだと感じた。
  • 2025年12月20日
    食べたくなる本
    料理本批評ってはじめて読んだ。 批評というと、いろんな人の意見や主張をばっさばっさと切り捨てつつ己の論を構築していく、みたいなちょっと上から目線なような印象があったのだが、この本はちがった。 食や料理家に対する尊敬の念を感じるし、王道なものにも常軌を逸したものも素直に受け止めたり、驚いたり、影響されたりしてみせる、筆者の斜に構えてなさというか懐の深さがすごくいいなと思った。 これまでに様々な人が様々な立場から考えて、研究してきたもの。受け継がれる味、消えていく味。という、脈々とつづく人と食の歴史に思いを馳せ、一食一食を大切にしたいと思った。
  • 2025年12月16日
    さみしくてごめん
    永井さんは学校の先輩だ。 昔、自分の幼さゆえに迷惑をかけ、「あなたはいろいろな人を失望させました」というメールを受け取ったことがある。それ以来交流はない。 前後の記憶もあいまいなほど過去の出来事だが、人から「失望した」と言われたのは人生でいまのところそれが唯一の体験だ。 その衝撃と申し訳なさと恥辱の気持ちが淡くただたしかに深層に残っており、屈折した罪悪感で永井さんの著作にはなかなか手が伸びなかった。 またそれとは別に、知人がひとかどの者になっていると自分が何者でもないコンプレックスが刺激されるようで微妙な気持ちがあり、距離を置いていたのだが、母に無理やり借りさせられた(?)ため少し読んだ。 世界に対する解像度が高い人なのだなと思う。わたしはそんなに細やかに具に世界を見て面白がったり訝しんだり驚いたりできない。きっとわたしだけでなく多くの人ができないから、彼女はひとかどの者になったのだろう。これを感性と呼ぶのだろうか? 永井さんはたしか学生の頃からブログを書いていて、それがとにかく面白かった。そのユニークな着眼や発想は、所与のものもあるだろうが、昔から積み重ねてきた言葉にして出力するという行為が、洗練されていま実を成しているということなのだろう。 それを素直に、すごいと思い、また何者でもない自分にいたたまれなくなって、本を閉じた。
  • 2025年12月15日
    虚空へ
    虚空へ
    先日、祖母を見送った。 言葉にできない気持ちでいっぱいで、驚きなのか、哀しみなのか、喪失感なのか。心の準備はできていたからか、思ったより穏やかに受け止められているなと思う時もあれば、不意に涙が流れる瞬間もある。 人が旅立つ瞬間を共にするのは初めてで、あまりにも生と死が地続きで、その境の曖昧さを思い頭がぼうっとしてしまう。こんな時だからこそ思索できることがあるはずだと思い、自分にしては珍しく詩集に手を取った。 十四行の言葉少なな詩。普段好んで読んでいる学術書たちとは対照的なひろい余白。それなのに情報がひろがっていく。まるで森の中でゆっくりと深呼吸をしているかのような、言葉を通して自分の心の内奥に思いを馳せられるような探究の時間。こういう時のために、人には詩が必要なんだなあと思った。 今読んでよかった。今じゃなきゃ読めなかった。
  • 2025年12月14日
    男女賃金格差の経済学
    タイトル的に硬派な学術書なのかなという印象を受けており、経済学の門外漢である自分が読めるのか?と思いつつ読み始めたが、とても明晰な文体で驚くほどすいすいと読み進めることができた。 日本における男女の賃金格差の実態とその解決策について、経済学の視点から統計を用いて定量的なデータで解明している。学生の頃、経済学ってモデルを示すだけで実際とは全然違うじゃん!とひねくれていたが、モデル化によって複雑な事象が明確になり理解しやすくなるのだなあと今さらながら実感した。統計ってすごいぜ。 ゲーム理論で考えると、企業が男女を公平に扱い、家庭でも家事を男女平等に分担するともっとも効率的なナッシュ均衡が実現する。にも関わらず、日本の男女賃金格差はOECD諸国の中だとワースト2位である。それを招く原因とはなにか?最たるものはジェンダーバイアスである。「女性はすぐに仕事を辞めるので育成にリソースを割かなくて良い」「女性に大変な仕事をさせるとよくないので手堅い仕事を回そう」などと統計的差別や代表性バイアスからくる意識的・無意識的な女性に対する差別的な扱いにより、女性はキャリアアップをすることが困難な状況になっている。 仮に成長意欲が高い女性がいたとしても、差別的な処遇を受ける状況下では、成長の限界を感じて結果的に辞めてしまう。このときバイアスが自己成就的であるという。 また長時間労働をすることで評価される長時間プライムも、出産や育児を担う女性にとってネガティブに作用する。 差別の解消には、まず組織における格差の実態を明らかにすることが必要だ。単純な平均賃金の男女比較では実態と乖離することがあるので、回帰分析を用いて、経験や子供の有無が同じ属性の男女で比較する必要がある。組織内での格差を可視化できたら、是正するための取り組みを。女性対象の育成研修を行ったり、管理職に引き上げようとする取り組みと同時に、労働スタイルの柔軟性の確保により、育児と両立しやすい働き方を実現することが必要だ。 そして改善されたかどうかの証明のために、KPIに基づく自己点検が必要となる。というのが大筋だった。 非常に冷静かつ建設的な提言だと感じたし、チャイルドペナルティやマミートラックが自分ごとであるいち女性としては、ぜひこの施策の実現に期待したいと感じた。読んでよかった一冊!
  • 2025年12月9日
    差別はたいてい悪意のない人がする
    読みながら、自分も差別の対象にされているかもしれないという憤りと、自分も差別をしているかもしれないという焦りを行き来する、緊張感のある一冊だった。 「差別」という言葉を聞くと、なんとなく自分とは縁遠いことに感じてしまいがちだった。日本に暮らしていると、自分が明確に差別されているという経験をすることはあまりないので、「白人からの黒人への差別」というような海外の事例をイメージしていたからだ。 しかし本書を読んでいると、差別はもっと身近なところにあり、多層的かつ複雑な構造をしているがゆえに、社会に浸透して取り除くことは難しいものだということに気づく。 作中の例に挙げられていたもので印象的だったのは、韓国内で女性は男性に差別されているけれど、韓国に流れ着いたイエメン難民に対して、韓国の女性は犯罪を恐れる、滞在を拒否するといった特権を行使することができるという例だった。 人間は単純な二分法ではわけられず、たとえば黒人の異性愛者でイスラム教だったら?白人の同性愛者でトランスジェンダーだったら?と様々な立場があり、文脈によって差別する側にも、被差別者にもなりうる。 そして差別の構造は再生産される。自分が被差別者の立場に置かれると、特権的待遇を受けられないがゆえに、差別している側に比肩するほどの能力を身につけることが難しく、「被差別者は劣っているのだ」というレッテルを強化してしまう。 差別をめぐる現代のさまざまな言説にも言及している。女性の登用率を増やすことは、男性に対する差別なのか?どんな人にも、他人を嫌う自由がある?デモによって公共機関に影響を与えるのは迷惑?など、身の回りで聞いたことがあるようなモヤっとする問題についても、差別論の研究者の視点から明晰な捉え方を示唆してくれる。 差別をしないように努力しようで終わりではなくて、差別撤廃法の制定が必要であるるという、制度による解決策を提案しているところも現実的でよかった。
  • 2025年12月5日
    観光客の哲学 増補版
    「訂正可能性の哲学」と同様、わからないのに面白くぐいぐい読み進められる読書体験だった。 内容は難解で、理解できたとは言えないのでメタ的な感想しか出てこないのだが、氏の物事を構造的に捉え、ある事象の本質を異質なもののアナロジーとすることで解釈を多様に深化させていく、卓越した思考力と独創性に舌を巻くばかり。 今度こそはしっかり理解しようと1行1行気合を入れて読んでいても、その自在な発想力と広範な知識からくる仔細な記述にあっという間にふり落とされてしまう。でも、ほんの少しキーワードくらいは頭に残せたのでよかったと思う。 本書の主な主張は、AかBか、右派か左派か、ナショナリズムかグローバリズムかといった二極化した価値観がはびこる世界において、「AでありながらBでもある」というようないずれかに属しない自由なオルタナティブの提案である。そのコミュニティのウチでもソトでもなく、ただ無責任に楽しんで去っていく観光客のような在り方を肯定することで、世界をより高解像度で捉えられる、ということだろうか? 政治的には対立しながら経済的には関係性を続けていたり、反体制を謳いながら愛国心を持つというような、一見相反する価値観は共存するのだと気づくと、自分のミクロな社会生活に置き換えても葛藤が解消されて少し楽に生きられるかもという気持ちにはなった。
  • 2025年12月4日
    カフェゴトーの記録
    カフェゴトーの記録
    なんてなんてなんていい本なんだ。 この本を読むまでは名前も知らなかったカフェゴトーだけど、その静かな語り口から伝わる慈愛に満ちた佇まいにじんとして胸がいっぱいになる。 ひとの純粋な想いからはじまり、続いていくもの。人々が人生のひとときを過ごし、通りすぎていく場所。生産性とか効率性を求められる現代で、人を想いながら、変わらず在るということ。その有難さと尊さにしみじみと触れながら、激しく移り変わる世の中で、そんな存在がいつまでい続けてくれるんだろうとその儚さに思いを馳せる。帯にある「明るくて寂しい」という言葉が、あまりにも形容としてぴったりな読後感だ。 文章はもちろん、撮り下ろしの川島小鳥さんの写真も美しい。
  • 2025年11月27日
    社会学入門一歩前
    タイトルから見て初心者向けだろうというのと、高校の現代文の問題にも取り上げられているということで、きっと読みやすいであろう、社会学に入門しちゃうぞ〜と目論んで手に取ったのだが、思っていたより難しかった。 学問の体系を説明するのではなくて、さまざまなトピックごとに社会学的な捉え方を解説してくれる、エッセイ的な構成なのでとっつきやすくはあるのだが、言語、身体、観念…といった抽象度の高いテーマはなかなか咀嚼しづらかった(カリスマとは何か、憧れと欲望とは何か、といった少し具体的なテーマになると少しわかる感じがあった)。 なのでするする読めたかというとそうではないのだけど、高校生のときに現代文の授業を受けながら、自分と社会とのつながりに純粋に不思議を感じた時のことを思い出した。自分は、他者がいるから成り立つということ。「すごい」も、絶対的にすごい人やものが存在するのではなくて、なにか比較するものがあるから評価されるのだということ。当たり前だと思っていたことが、社会学のレンズを通すと違って見えるという新鮮な驚きが蘇ってきた。 ここ最近、社会学や人文学に対する批判がかまびすしいが、生きている中で生活に紐づいて感じられる不思議、悩み、疑問を扱ってくれるというのは、「役に立つ」ことはないかもしれないけど、<役に立つ>に違いないと思う。 モヤモヤしながら通読してしまったので、折に触れて一章ずつ丁寧に読み返したい。
  • 2025年11月24日
    〆切は破り方が9割
    ウケを狙いすぎてところどころ表現がくどいと感じたけど、声を出して笑ってしまうようなところもあり、自分もこんな面白い文章を書けるようになりたいと思った。 我ながらかなり事務作業が苦手な性質で、確定申告のような面倒な手続きを前にすると蕁麻疹が出るほどストレスを感じるのだが、漫画家のみなさんも「控除の書類を出すよりも高額な保険料を支払い続ける方が楽」といった理に反する感覚を持っているとわかって同じ穴の狢を見つけた気持ちになった。わたしだけじゃなかった。 〆切は破っているのではなく、世界一脆弱な材質でできているがゆえに気がついたら破れているもの、という発見が目から鱗。
  • 2025年11月21日
    私とは何かーー「個人」から「分人」へ
    夏目漱石すら、本当にやりたいことを見つけたいのに見つけられないと悶々してたんだね…。 読み始めたときは、分人ってそんなに目新しいコンセプトじゃないかも?と思ってたけど、 本当の自分は幻想だったのだ!と思うと、こういうとき自分らしくいられない…という悩みもなくなるし、 たとえば人間関係がうまくいかないとき、「環境を変える」のではなく「分人の構成比率を変える」と捉えることで、「環境を変えたけど、本当の自分を見つけられない…」という煩悶から解放されるのかもと思った。
  • 2025年11月19日
    私たちはどう学んでいるのか
    学習における環境の重要性を説いた目から鱗の良書 ・能力は虚構である。「力」というメタファーを用いることで、内在性と安定性があるものと勘違いされているが、実際には文脈依存性があり、揺らぐものである。 ・知識は伝達しない。何かを教えれば知識が伝わるというのは勘違い。知識の性質は3つあり、さまざまな場所で活用できる「一般性」他の情報と繋がって体系をつくる「関係性」適切な場面で応用できる「場面応答性」である。このように知識を構成するためにら、言葉の伝達だけでは不充分。 ・「兆し」は真の正解ではない。a, b, cという条件を満たしていたらAが実現できるという考え方は間違い。a,b,cの原因を理解していなければならない。 ・創発的な学習は工場生産のようなプロセスではなく、弟子入りして日本舞踊を学ぶような、コンテキストにおける繰り返しの学びによって発生するもの。
  • 2025年11月17日
    ウィトゲンシュタイン、最初の一歩
    筆者が高校生の頃の自分に向けて書いたとのことで、かなりやさしくひらいて書いてくれているのだけれども、それでも難しい。 哲学者というものはこうも抽象的なことについて延々と考えていてすごい。 でもウィトゲンシュタインというずっと気になっていた哲学者の思想への入門編としてはこの上ないわかりやすさなのではないか?と思う。 ウィトゲンシュタインは、「いまここ」の日常に根差した考え方をする哲学者だったのかなと思う。だから、今ここにないもの、ここにあることを証明できないものは議論の俎上にあがらない。世界は自分から始まり、自分が死ぬときに終わる。世界のどこかになにか見えない真実が隠されているということはなく、見えるものが真実だ。無が存在することを証明できないなら、存在について議論することは無意味。語りえないことについては、沈黙せよ!と、かなり実践的な考え方をしている哲学者なのかなと思った。 デカルトの方法的懐疑について、信じているものがなければ疑うことはできない、と論破しているのはなるほどと思わさせられた。
  • 2025年11月16日
    経済学レシピ
    経済学レシピ
    とっても読みやすくておもしろかった! 誰もが知っている食材の話から、華麗に経済学の話に展開し、ぼんやりと聞いたことはあるけれどよくわからない数々のトピックについての議論を展開してくれる、やさしい経済学エッセイ。 実はアフリカ大陸で生まれたというオクラの話から、自由貿易とは本当に自由なのか?という話へ。えびの養殖の話から、国家の経済を発展させるうえでの幼稚産業保護政策の話へ。ビーガンにも「他の客と平等に」鶏肉を提供するという航空会社の話から、経済と社会における平等と公平について考えたり、料理の味を引き立てるさりげない存在である唐辛子の話から、GDPの算出においては見えないものとされている女性ケア労働について考えたりと、身近なトピックから経済学についての知識を授け、社会のさまざまな課題について考えさせてくれる含蓄深い内容だった。
  • 2025年11月14日
    資本主義はなぜ限界なのか
    すごいわかりやすく書いてくれてる感じはしたけど…おれがバカだからか…正直よくわからなかった…! 大学時代に経済学の授業オールCだったからな… でもそもそもの経済学の誕生とか、古典派・ミクロ/マクロ・マルクス経済学までの歴史を大づかみに説明してくれていて、こういう初歩的な情報を知る機会はなかなかないから経済学初心者としてはありがたかったぜ わかった範囲でまとめると、 ・20世紀のバブル崩壊以降、日本を含む先進国は低成長の中で経済成長を追い求めている ・経済成長を求める企業活動により、環境問題が限界まで悪化している。また、資源を市場の外に求める略奪行為(=他国との戦争)も発生している ・実現し難い経済成長を追い求めるのをやめて、脱成長を実現するべきだ ・脱成長を実現する究極の体制は、利潤も成長も生まない脱成長コミュニズムだが、現在の資本主義からの突然以降は市場にも社会にも混乱を生むだろう ・そのため、過渡期としての脱成長至上主義を提案する。この体制においては、発生した利潤は公的資金として拠出するので、株式会社を主とする市場経済の競争を維持しながらも、成長を止めることができる ・この実現のためには、社会政策における利他の心が重要だ という感じか…? 感情論や筆者の主観的な主張というより、経済学のフレームワークに沿って合理的に説明されている感じが読みやすかった。 なんとなく成長はよいもの、コミュニズムは悪いもの、という固定観念があるが、必ずしもそうじゃないのでは?と価値観の変容を促してくれる一冊だと思った。
  • 2025年11月10日
    ようこそ、ヒュナム洞書店へ
    ようこそ、ヒュナム洞書店へ
    読書が好きで、人生のうち数年かを仕事に費やし、疲弊して、愛する本の世界に戻った筆者だからこそ書ける、優しい寄り添いの本。 好きなことを仕事にして自己実現すること、やりたいことを見つけること、成長のために階段をのぼりつづけること。働きながら生きるために必要だと教えられてきたことに疲れ果ててしまった人たちに、幸せとはなにか、いい人生とはなにか、をそっと諭すように教えてくれる物語。 肌寒い日に温かい飲み物を携えて大切に読みたい一冊。
  • 2025年11月3日
    大胆推理! ケンミン食のなぜ
    まず装丁がいい。小ぶりなソフトカバーながら、表紙はしっかりと固く、カバーもざらざらとした凸凹のある質感で非常によいホールド感である。 そしてなにより川村淳平さんのイラストである。写実的でありながら水彩画ならではの繊細さを感じさせる色彩で描かれるあずきトースト、讃岐うどん、お好み焼き…見ているだけで幸せな気分になるようだ。 中身は軽い学術調査を織り交ぜたエッセイになっており、日本各地の食にまつわるさまざまな問いに対する筆者の推理が主である。 北海道からはじまって、東日本・西日本を辿り、沖縄に辿り着く章立ての中で、国内の食の多様性と、ちょっとした蘊蓄を学ぶことができ、日本のいろいろな食を楽しみたいという意欲が湧いてくる。
  • 2025年11月3日
    生きることでなぜ、たましいの傷が癒されるのか
    大竹裕子さん、なんて聡明な方なんだ! 1990年代の虐殺と紛争の傷跡がいまだ残るルワンダで、人々がどのように傷つき、苦しみ、そしてどう再生していくのか、というプロセスについて、参与観察による民俗誌調査を通して明らかにしている。 トラウマ体験をカウンセリングによって治療するというのは、西洋医学に基づく個人主義・普遍主義的な思想に基づく手段であり、非西洋社会にも等しく適用できるものではないという批判が目から鱗だった。 西洋圏の研究者たちが未開のものとして軽んじてきたであろう、土着の魔術的な文化が心の傷の治療に効果的なこともあり、伝統的な村医師に診てもらうほうが症状が楽になるケースもあるようだ。 ここで描かれているのは、生き残った人々が共同体を築き、支え合って生きていこうとする姿だ。「家族はなぜ殺されたのか」「自分はなぜ生き残ったのか」という実存的な問いを抱えながら、同じ傷を持つ人々と復興に向けて助け合うことで、自分の経験の意味を社会の歴史というナラティブの中に位置づけることができる。そして西洋や日本のような直線的な時間ではなく、円環的な時間のなかで生きる彼らは、「未来に向かって生きることで過去が癒される」と考える。まさに「生きることで、魂が癒される」ことの文化的背景が、質的研究と理論研究の巧みな組み合わせにより詳らかにされている。 大竹さん、ルワンダの人々を助けたいという強い想いで現地で住み込みでリサーチと支援をしていること、そこで現地の人々とラポールを築いてかなり肉厚な調査をしていること、そして自身の研究を学術的見地を明らかにしながら明晰に論文化しているのが本当に凄すぎる。この研究をもとに国際援助の新しい仕組みづくりを実行したら、ノーベル平和賞が取れそうなくらいの内容だと思った。
  • 2025年11月2日
    無数の言語、無数の世界
    無数の言語、無数の世界
    さまざまな言語の社会・文化的背景について紹介してくれるエッセイ的な本かと思って読んでみたら、さまざまな研究の事例が紹介されるわりと硬派な学術書で、読むのがちょっと大変だった! でも言語は社会と紐づいて発展するという認知言語学の考え方に基づいて、いろいろな事例が紹介されていて興味深かった。 章ごとのテーマが時間・空間・色などの身近なものだったり、冒頭で紹介される筆者の経験談(マンハッタンの街角で眺めた雪や、飛行機から見えるマイアミの海の色をどんな言葉で表したらいいだろう?など)が美しくてよかった。 「言語はそれを話す人々の生き方や世界の感じ方と密接に結びついており、言語が失われるということはそうしたオルタナティブな経験の可能性が失われるということでもある。」
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