ワット "増補 股間若衆" 2025年10月15日

ワット
@watt
2025年10月15日
増補 股間若衆
銅像のちんちんの部分はどうなっているのかを延々と探求した奇書。筑摩書房のオヤジ系ラインナップに連なるところだけれど、親本は新潮社で、初出の芸術新潮掲載時は「日本近現代彫刻の男性裸体表現の研究」とのサブタイトルがついていた。美学で正面から話が進められそうなものを、微妙にずらして考える。その作品よりも、作品によって起こった反応や影響に焦点を置くことによって、社会におけるちんちん、というか、人々の羞恥の感覚、猥褻の捉え方、表現におけるタブーのあり方、ジェンダーに関する問題が次々にあぶり出されていく。  絵画などの平面作品と違い背景が描かれない分、タイトルとポーズで作品解釈を行う彫刻の世界。一つ一つの裸像のパーツは、とても重大だ。そんな中でふんわりとしか表現されていない作品のちんちん部分のことを、著者は「曖昧模っ糊り」と名付ける。丸出しか、葉っぱか、曖昧模っ糊りか。なぜ、曖昧模っ糊りなのか。なぜ、なぜ、どうして。彫刻家に話を当てることはしない。その作品との距離感が快い。
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