
碧衣
@aoi-honmimi
2025年10月4日

戦前昭和の猟奇事件
小池新
読み終わった
阿部定事件や津山三十人殺しなど戦前に起きた9つの事件を当時の新聞記事と共に辿っていく本書。
阿部定事件の記事に出て来る「怪事件」「怪美人」といった江戸川乱歩の小説に出て来そうなフレーズが実際に使われていたことに地味に驚き、定の手練れていそうな容姿や立ち振舞いとその内に秘めた激しい愛、出所後しばらくしてこつ然と姿を消す最後といった物語性を秘めた存在感に人々が惹きつけられ、彼女の存在が後世まで語り継がれるのも分かる気がした。
あの時代に新聞が大きな役割を果たしていたのは容易に想像出来るし、当事者たちもそれを自覚していただろうと『チフス菌饅頭事件』の記者が自分に酔ってる気持ちの悪い文章からも伺える。それと「女の細腕で夫を支える〜」とか余計な一言が多い。
女性の社会進出が困難な時代に夫に先立たれ、残された三人の子供たちを成人まで育て上げた後に年下の男性との心中を遂げてしまう日本初の女性アナウンサーの遺書は現代でも共感する人が多そうだと感じたし、無責任な誹謗中傷が最悪な事態を招いてしまうのは今も昔も変わらない。
