
ヨル
@yoru_no_hon
2024年8月16日

2024年ベスト本
須賀敦子の自伝的エッセイの一つであるが、まるで物語を読んでいるような読み心地なのである。劇場から流れるでるオペラを聴きながら眠りにおちた日から、20歳の時に父と愛人といた病院へと、時間軸が横へと延びていく......そのようにして、オペラが小窓から流れでて彼女の記憶を手繰り寄せたように、思い出を少しずつ横へ横へ紡いでいる印象を受けた。60を過ぎてから文筆家になった彼女だが、その思い出は色あせることなく今も生の形を保ったまま、わたちたちの前に立ち現れてくるのである。ところどころに死の匂いを感じるのもそういうことだろう。これからも彼女の作品を読んでいきたい、そう思わせてくれるような作品。

