
Hinako
@Lady_Hinako
2025年10月11日
ことば、身体、学び 「できるようになる」とはどういうことか
今井むつみ,
為末大
読み終わった
為末大さん(元トップアスリート)と言語心理学者・今井むつみさんによる対談本。
「ことば」と「身体」、そして「学び」という、一見別々の世界が、ふたりの対話の中で少しずつ重なり合っていく。その過程がとても興味深かった。
もともと私は、言語と身体の関係に関心があったので手に取ったのだけれど、対談形式ということもあって想像通りすぐに読めた。けれど読み進めるうちに、私はどうやら対談形式の本があまり得意ではないらしい、ということにも気づいた。言葉が行きつ戻りつしながら展開されるあのテンポが、少し落ち着かないのかもしれない。。。
ただ、このテーマを別の形式でまとめるのは難しいだろうとも思う。おそらく、ことばと身体の間を行き来するような「揺れ」そのものが、この本の呼吸なのだ。
為末さんの身体感覚を言葉にする力には圧倒された。筋肉の動きやタイミング、重心の微妙なズレを、まるで風景のように描写していく。その精度の高さに、「この人は本当に自分の身体を理解しているんだ」と感じた。たしかに、金メダルを取るほどの人というのは、こういう次元で身体を感じているのかもしれない。
本書の中では、言語化が上達を助ける場面もあれば、逆に言葉にしすぎることで身体が固まってしまうこともある、と語られている。言葉がただの記号ではなく、身体の経験や感覚と結びついているからこそ、思考や学びが生まれるのだ。
言葉に頼りすぎてもいけない。身体だけに頼ってもいけない。その間にある微妙なバランスの中で、人は「できるようになる」ことを探していく。
そんなことを考えながら、読み終えたあともしばらく、自分の中の「ことば」と「身体」が対話を続けていた。