
花木コヘレト
@qohelet
2025年10月16日
小島の春
小川正子
読み終わった
図書館本
ハンセン病
久しぶりの苦しい読書でした。荒井英子氏が苛烈に指弾した本だからです。簡単に言うと、ハンセン病患者の隔離政策が間違っていたにも関わらず、小川正子氏はそれを進めてしまった、ということです。
だから、歴史の審判というものは、極めて、重ねて極めて厳粛です。小川氏の良心とは関わりなく、歴史はあくまで患者の視線によって裁かれなければならない。患者の視線に立った場合に、小川氏に弁明の余地はない、と私も思います。
しかし、歴史の厳粛さに耐えられない生身の人間としての私にとって、本書は実に胸に響くものでありました。小林秀雄氏の評を待つまでもなく、小川氏の文章が血でもって書かれていることは一読すれば明瞭です。歴史家には過去を裁く責務があるでしょうが、市井の一員である私はそこから自由である権利があるでしょう。特に、愛生園で自死した、松原某を巡る小川氏の文の筆致は峻厳ですらある、と表現したいです。
なお、本書の解説を任されている松岡弘之氏には、小川氏を過度に擁護する姿勢は見えません。そういう意味では、すでに小川氏の評価はマイナス面に定まってしまっている、と言っても過言ではないでしょう。しかし、現代に於いても、本書を読むことで、小川氏がつまずいた石に、読者も共につまずくことはとても有益であると思います。
小川氏が結核を通してハンセン病患者と心が通じたように、我々も結句、死をもってしか他人とはつながり得ないのであるという、絶望をこの身に引き受けることができるのですから。

